前回は、多くの日本企業でなかなか減らないPC運用のToil(労苦、ここでは自動化可能なのに自動化されていないメイン業務に割り込んでくる単純繰り返し作業の意)が、いかに個人や組織にダメージを与えるものかを解説しました。Toilを削減するには、Device as a Serviceの導入が有効です。今回から数回にわたって、Toil削減に重きを置いたDevice as a Service導入のポイントを解説していきます。キーワードは、「API連携」と「ワークフロー自動化」です。
デジタイゼーションとデジタライゼーション
まず、Toilを削減するDevice as a Service導入の最終的なゴール(なりたい姿)を明確にしておきたいと思います。それは、PC運用のデジタルトランスフォーメーション(DX)に他なりません。昨今は、DXの言葉を聞かない日はないというくらい多くの企業が率先して取り組んでいます。
DXは、単に紙の業務をウェブシステムなどに置き換えれば達成できるのかというと、そうではありません。それは、「デジタイゼーション」(Digitization)と言います。それに対して、労苦の多いPC運用から管理者を解放するような、デジタル化することでより高い付加価値を踏み出すことを「デジタライゼーション」(Digitalization)と言います。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは、多くの記事で解説されているので割愛しますが、逆に言えば、それほど勘違いしている人が多いということでもあります。単なる紙の業務のデジタル化は、DXではありません。真のDXはデジタライゼーションです。
デジタル化したことにより、大きな付加価値を得なければDXとは言えませんし、そもそも経営課題として全社で取り組んでいく意味がありません。よくあるのが、紙の帳票を「方眼紙Excel」に置き換えDXだと言っている例です。これでは、運用そのものが変わっていないのです。単に、「メールで送れるようになった」「紙代が削減できた」程度の効果です。デジタル化するタイミングで業務をデジタルに最適なモデルに再構築することが必要で、それが伴ったデジタル化がデジタライゼーションです。これこそが真のDXなのです。
この連載でも常々申し上げていますが、今のPC運用業務をそのままDevice as a Serviceで実現しようとすることは誤りです。「本当に必要なの?」という多くの手作業を単に自動化するのではなく、従業員が最適で、最高のパフォーマンスで働ける、働きやすい環境を提供するとともにIT部門の真の役割である全社DXに推進できるように、根本的にPC運用業務を見直す――その先にデジタル化があることこそがPC運用のDXというわけです。そして、これがDevice as a Serviceの導入の最終ゴールです。その結果、多くのToilが削減されます。