企業の最高情報責任者(CIO)はすでに、今なお続くクラウドへの移行支援からデータ主導型サービスの導入まで、2022年に進めるべきデジタルトランスフォーメーションの課題を山のように抱えている。しかしどうやら、もう1つ課題をこなさなければならない。その課題とは、量子コンピューティングだ。
CERN openlabの責任者であるAlberto Di Meglio氏は、IBM Researchが最近開催したイベントで、「実現までにはまだしばらく時間がかかる。だからこそ今、量子技術に備え始めるべきだ」と語った。
量子技術についての調査を始めてみれば、すぐにこの分野が急成長していることが分かるはずだ。コンサルティング企業のDeloitteによれば、ベンチャーキャピタルが2021年中に量子技術の企業に投じた金額は10億ドル(約1100億円)を超えるという。また次の12カ月間には、この分野に対する関心がさらに高まり、年末までのベンチャーキャピタルの投資額は50億ドル(約5500億円)を超える可能性が高い。
資金の流入は、信頼性が高く実用的な量子コンピューターの開発に役立つ。実用的な量子コンピューターの開発は、今非常に優先順位が高い課題だ。コンピューティングに利用できる量子ビット(キュービットとも呼ばれる)の数を増やせれば、企業が潜在的な用途を見つけることも容易になる。
Deloitteによれば、量子技術はまだ揺籃期にあり、実用的な応用事例はまだ数が少ない。同社は、2022年の段階で日常業務に量子コンピューターを利用できる企業は十数社に満たないと予想している。
ただしDeloitteの意見では、量子コンピューティングが12カ月以内に大きなメリットをもたらすようなことはないとはいえ、いずれは年間数十億ドルの利益を生み出す技術になる可能性が高いため、企業のCIOは、量子技術の利点を活用できるよう今から準備を始めるべきだという。
このことがすでに世間に理解されていることは、さまざまな証拠が示している。例えば、量子技術の企業であるZapata ComputingとWakefield Researchが最近実施した調査では、企業の幹部役員の4分の3(74%)が、量子コンピューティングを早く取り入れなければ、すぐに他社に後れを取ってしまうと述べていた。
Di Meglio氏は、自分の会社がどんな領域で量子技術による優位性を生み出せる可能性があるかを知るための秘訣は、新しい機器や、ツールや、コラボレーション手法に関する、すでに上がっている成果に注目することだと考えている。
同氏は、早い時期から準備を進めておけば、長期的に量子技術の活用に成功するための人材や、技術や、パートナーを見つけやすくなると述べている。