オープンハードウェア標準の世界的団体であるRISC-V Internationalは米国時間2月7日、Intelが同団体のPremier会員になったと発表した。
Intelはこれまで、クローズドソースの複合命令セットコンピューター(CISC)であるx86プロセッサーから膨大な額の売上高を手にしてきた。その同社が今回、オープンソースの縮小命令セットコンピューター(RISC)のプロセッサーを推進する団体に参加することになった。次は何が起こるのだろうか。犬と猫が一つ屋根の下に住むようになるのだろうか。
RISC-Vの共同開発者であるDavid Patterson氏は、同プロセッサーの命令セットを誰の物でもなく、すべてのチップメーカーが使用できるコンピューターチップ向けのオープンなリングワフランカ(共通語)にする上で尽力した。Patterson氏は同日、「50年前にマイクロプロセッサー分野の先駆けとなったIntelがRISC-V Internationalの会員になったことをうれしく思っている」と述べた。
今回の加盟の理由はどこにあるのだろうか?IntelはArmとx86、RISC-Vのすべてが重要な役割を果たす未来を見ているためだ。同社は、特にRISC-Vに関するより広範な知的財産(IP)とチップ製品に向けた堅調な需要があることを既に把握している。
またIntelは、初期段階にあるファウンドリー新興企業をサポートする目的で、10億ドル(約1200億円)規模のファンドを設立すると発表した。Intel CapitalとIntel Foundry Services(IFS)は協力して、チップのIPやソフトウェアツール、革新的なチップアーキテクチャー、先進的なパッケージテクノロジーに対する投資を優先していくという。IFSのプレジデントであるRandhir Thakur氏は、この新規プログラムで業界における2つの重要戦略に注力していくと述べた。これらの戦略とは、オープンなチップレットプラットフォームを用いたモジュラー型製品の実現と、x86とArm、RISC-Vを網羅、包含する、複数の命令セットアーキテクチャーを活用した設計アプローチのサポートだ。
これらイニシアチブの一環として、IFSはオープンソースのソフトウェア開発プラットフォームに資金を提供していく。これによりIFSは、代表的な業界標準アーキテクチャーとなっている3つのチップアーキテクチャーすべてにIPを提供する。
RISC-Vは従来からモジュール型のオープンなビルディングブロックを提供してきている。IntelとRISC-V Internationalが手を組むことで、RISC-Vのエコシステムが拡大されるとともに、商用化に向けて進んでいくための力となるはずだ。
RISC-V Internationalの理事会及び技術運営委員会に参加することになったIFSのカスタマーソリューションエンジニアリング担当バイスプレジデントのBob Brennan氏は、「RISC-Vの成長と普及を加速し、チップ設計者に向けた価値を最大化する上で、オープンソースのソフトウェア/ハードウェアが有するリッチなエコシステムは必要不可欠だ。Intelは、フリーでオープンなRISC-V命令セットアーキテクチャーの成長を支えることを光栄に思っている」と述べた。
またIntelは、埋め込み型のコアから高性能コアに至るまでの、IFSのすべてのシリコン上でRISC-Vがうまく動作するよう、同社IPの最適化にも取り組んでいく。
IntelはこれまでにRISC-Vチップを提供している。同社の「Nios Vプロセッサー」はRISC-Vをベースとしている。同社はRISC-Vへの新たな投資がRISC-Vの開発を加速させることに期待している。
RISC-V Internationalの最高経営責任者(CEO)Calista Redmond氏は、「オープンソースに対する大規模投資は歴史の流れを変える力を有している」と確信している。また同氏は、今回のコラボレーションが「半導体業界に大きな変革をもたらすきっかけとなり、(今回の)パートナーシップによってオープンコンピューティングのイノベーションが加速されていくだろう」と語った。
IntelとRISC-Vが協力し、大きな流れを変えることになる。RISC-Vは今日を境に、プロセッサーに対する興味深いアプローチから、プロセッサーの力の源へと大きく変化していくだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。