インテルが明らかにしたハードウェアの長期保管ラボ--その狙いとは

Liam Tung (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2021-12-09 07:30

 Intelは、同社が開設した長期保管ラボ(LTR Lab)の詳細を明らかにしている。この施設は、古いチップのセキュリティ上の脆弱性を精査できるよう、ハードウェアを保管しておくためのものだ。

 同社によれば、ハードウェアを一元管理するLTRラボが必要であることが分かったのは、数年前に特定の構成のハードウェアに影響を及ぼす問題のトラブルシューティングを行おうとした際に、オークションサイトのeBayで製品を探さざるを得ない状況に陥ったためだったという。The Wall Street Journalの報道によれば、同社が探していたプロセッサーには、「Sandy Bridge」のCPUが含まれていた。

 Sandy BridgeのCPUが発売されたのは2011年のことだ。Sandy Bridgeの製造は2013年に終了したが、2018年になると、Intelは、Sandy Bridge以前のプロセッサーに発見された投機的実行の欠陥(Spectre)に対応するために、Microcode Update(MCU)でこれらのプロセッサーにパッチを適用する作業に追われることになった。

 Intelの製品ラインアップは非常に多岐に渡っている上に、OEM企業や、OSメーカーや、クラウドプロバイダーや、ファームウェアベンダーや、システムインテグレーターの事情に合わせてチップの構成が変更されることもあるため、実際の問題はさらに複雑になっている。同社は、それらのパートナーと協力しながらIntel Platform Update(IPU)の検証と提供を行っている。

 現在、LTRラボには2800種類のプラットフォームのチップが保管されており、もっとも古い製品は、2012年に発売されたものにまでさかのぼる。2022年には、保管されているプラットフォームの数を6000プラットフォームまで増やすという。保管されている製品には、ハイエンドサーバー用のものや、ハイパフォーマンスコンピューティング用、クラウドプロバイダー用、デスクトップ用やノートPC用、IoT(モノのインターネット)エコシステム向けの組み込み製品などが含まれている。

 同社は、ブログ記事の中で、「このラボを立ち上げたときの主な目標は、ハードウェアを一元的に保管する施設を作ることだった。後にその役割は、何千種類もの実際に運用されているプラットフォームを、その設計、ソフトウェア、ドキュメントなどの付帯資料と一緒に保管することに拡大された」と説明している。

 「Spectre」や「Meltdown」などのプロセッサーの設計に存在するバグは、長期間にわたって続く場合がある上に、研究者が新たな悪用手段を発見すればその性質も変わる可能性があるため、ハードウェアを一元的に保管しておくことは、Intelのエンジニアが将来バグを素早く修正するのに役立つ可能性がある。

 Intelによれば、このラボはエンジニアが「サポート対象製品のセキュリティ上の問題や機能的な問題をより効率的に分析するのに有効であり、同時に、製品を継続的に改善していくための積極的な研究が可能になる」という。

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