デジタル化先進国として有名な隣国エストニアほど知られてはいないものの、欧州の北東にあるバルト海沿岸地域の小国ラトビアでは、スタートアップのエコシステムが開花しつつある。
提供:Bojan Stojkovski/ZDNet
人口が200万人に満たないラトビアには、成功を収めているいくつかのIT企業が本社を置いており、同国の技術系大学は、スタートアップと学術界の協業プログラムを活発に展開している。
ラトビアには、第2次世界大戦中や冷戦中に諜報員が使用していた超小型の「スパイカメラ」である「Minox」や、航空機開発のパイオニアとして有名なIgor Sikorsky氏が開発した、世界初の複数のエンジンを積んだ大型航空機など、画期的なイノベーションを生み出してきた歴史もある。
ラトビアの田舎で育った31歳の起業家であるAlfya Kayumova氏は、生まれ育った環境からインスピレーションを得て、農業技術(最近では「アグリテック」とも呼ばれる)の世界に入った。
ビジネスや投資銀行の世界で何年もの経験を積み、現在はマッピング技術のスタートアップであるGreen Growthの最高経営責任者(CEO)を務めるKayumova氏は、世界中の多数の人々に影響を与えているグローバルな問題に取り組むことができるアグリテックに引き寄せられた。
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同氏は、米ZDNetの取材に対して、「農業は、今最も力強い成長を見せている産業の1つだ」と語った。「この分野は、これまで以上に限られた資源で、増え続ける人口の食料を賄うというグローバルな課題に焦点を当てている」
Green Growthは、農家の効率化を支えるための技術として、リアルタイム収穫量マッピング技術を開発している。
近年では、土地の劣化や土壌流出、気候変動などの問題が、ラトビアやバルト三国の他の国にも及んでいる。これらの国々では農業や農場運営が主要産業であるため、ことは重大だ。
「私たちは、農家にヒートマップや畑のアナリティクス情報を提供しており、実際の収穫物が畑にどのように分布しているかを伝えている」とKayumova氏は説明する。
「バルト三国やラトビアには、この技術を必要とする中小規模、あるいは大規模な農業関連企業が多数存在するため、大きな可能性がある」
多言語を扱える意欲が高い労働力
エコシステムの専門家によれば、ラトビアのスタートアップエコシステムを動かしているのは、高い競争力を持つ同国のIT人材だ。
ラトビアスタートアップ協会のAlina Silina氏は、その競争力の源泉として、ラトビアの労働者が、高い労働倫理や、新たな課題に取り組む意欲とオープンさを身に付けているのに加え、「世界でも最も大学進学率が高い」ことを挙げた。
欧州連合(EU)加盟国の中でもラトビアの労働市場を際立っているもう1つの理由が多言語を扱う能力だ。35歳以下のラトビア人は、公用語であるラトビア語の他に、87%がロシア語を、61%が英語を話すことができる。また、ドイツ語や北欧の言語も広く通用する。