KDDIとリバーフィールド、ソリトンシステムズは、5Gスタンドアローン(5G SA、5G専用基地局システム)と「AWS Wavelength」によるマルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)環境を活用した遠隔医療の実証実験を行った。手術支援ロボットの操作の様子を複数モニターへ伝送し、遠隔指導と5G SAとMECを経由した手術支援ロボットの操作を確認したと発表した。
モニターへ映像伝送と遠隔指導では、「KDDI DIGITAL GATE」の5G SA環境から接続したMEC上の映像中継サーバーで映像信号を分岐することにより、複数モニターへの低遅延の映像伝送を実現した。遠隔でリアルタイムな手術の指導が可能なことが確認できたとする。これにより、執刀医だけでなく別室や別拠点にいる熟練医、研修医などに映像を同時配信できるようになる。
ソリトンシステムズの伝送装置「Zao-X」とKDDIの5G SA環境およびMECを組み合わせて低遅延映像伝送を実現することで、有線ネットワークと同水準の高精細な映像を無線ネットワークで伝送可能であることが確認され、5G SAのエリア拡大により、場所を選ばない指導が可能になるとしている。
実証の構成
5G SA環境は、5G基地局と5G専用コア設備(5GC)を組み合わせ、5G技術だけで通信を可能としたシステム。ネットワークスライシングやユーザー近くのサーバーでデータを処理し、低遅延通信を提供するMECなどの新機能の提供が可能となる。AWS Wavelengthは、Amazon Web Services(AWS)のコンピューティングサービスとストレージサービス。これをKDDIのネットワークのエッジに組み込むことで、機械学習やIoT、動画やゲームのストリーミング配信など超低遅延が求められるエッジコンピューティング利用を支援する。
5G SAとMECによるロボット操作と複数モニターへの低遅延映像伝送の様子
なお今回の実証では、低遅延映像の伝送や複数拠点への映像伝送だけでなく、5G SAの特徴であるネットワークスライシングの機能を活用して同一ネットワークで提供される他サービスの影響を受けにくい安定した通信を実現できた。
各社の役割は、リバーフィールドは手術支援ロボットの開発および提供を行い、KDDIは5G SA環境の構築および提供、ソリトンシステムズは低遅延伝送プロトコル、映像中継サーバーの構築および提供となる。
3社は今回の実証実験の結果を踏まえ、無線ネットワークにおいて、医師の遠隔指導や手術支援ロボットの遠隔操作をスムーズかつ安定的に行うための技術的な課題を洗い出していくとする。