IBMは、直近の四半期の業績発表で、ハイブリッドクラウド事業の売上高が、前年比18%増の59億ドル(約8100億円)に達したことを明らかにした。また同社は、過去10年間で最も高い売上高成長率を記録した。その多くは、独立した事業部門であるRed Hatによるものだ。実のところ、Red Hatの売上高は「たった」12%しか増加しておらず、Red Hatの基準から見れば低い水準に止まっているが、これは他のどんな基準からしても非常に高い数字だと言える。では、新しい最高経営責任者(CEO)にMatt Hicks氏を、新しい会長にPaul Cormier氏を据えたRed Hatは、次に何を目指すのだろうか。
その答えは、今の方針を継続するというものだ。
2006年からRed Hatに在籍しているHicks氏は、インタビューの中で、「Red Hatが20年以上前に構築した中核的な基礎」をそのまま生かし続けると語った。その理由は、Linuxと、オープンソースと、優れたサポートの組み合わせが、クラウドやクラウドサービスへの移行や、エッジコンピューティングへの移行などの新しい市場でも、引き続き重要な役割を果たし続けるからだという。同氏は、「これからの数四半期は、とにかく実行することに力を集中する。今は、オープンなハイブリッドクラウドに大変勢いがある」と述べた。
ただし、勢いがあるのはクラウドだけではないという。Hicks氏は、「私たちには多くのチャンスがある。私たちは、General Motorsと同社のエンドツーエンドソフトウェアプラットフォームである『Ultifi』に関して連携しているし、2日前には、世界最大級の製造オートメーション企業であるABBとのパートナーシップを発表した。Linuxやオープンソース技術が、これらのまったく新しい業界の市場に駆り出されているのは素晴らしいことだと言える。私の仕事は、何かを変えることではなく、実行し続けて、今見えているチャンスを掴むことだ」と語った。
CEOのオフィスから役員室に移動するCormier氏は、Red Hatの歴史上初めて、会長としてオフィスを設ける予定だ。同氏は、今後も引き続きRed Hatのハイブリッドコンピューティングに関する取り組みを推進していく予定だという。これは、Cormier氏が言うように、「Red Hatはおそらく、ハイブリッドクラウドを推進すべきだと主張した最初の企業だ」からだ。
Cormier氏は今後について、「これまでに連携してきた数多くの顧客やパートナーと今後も連携していくが、特に彼らがハイブリッドアーキテクチャを採用できるよう支援することに力を入れていく」と述べた後、「私は戦略アドバイザリーボードを運営し、アドバイザーとしての立場で経営チームと連携していくが、顧客重視の取り組みも続けて行く」と付け加えた。
同氏は一般的な企業の会長よりも積極的な役割を担うことなるが、Hicks氏は問題はないと考えている。「私はPaulと10年も一緒に働いている」とHicks氏は話した。「Paulは、IBMと間に優れた組織構造と基礎を作ってくれた。私は、Red HatとIBMの関係は持続可能なものだと考えている」
経営的に独立した親会社であるIBMとの連携についても、これまでと変わりはない。Cormier氏は、「以前から、やってはならないことややっていいことは合意されており、それは今後も変わらない」と述べている。Hicks氏も、「市場に対して中立性を保つことは、Red Hatにとってだけでなく、IBMにとっても重要だ」と述べてこれに同意した。