NECは8月5日、「サステナビリティレポート2022」において、2021年4月以降のESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組みを公開した。本記事では、主な取り組みを紹介する。
同社は、企業価値の向上につながる非財務の取り組みを特定するため、グループ企業のアビームコンサルティングと連携し、非財務の取り組みが財務パフォーマンスに与える影響を可視化する財務/非財務の相関分析に着手した。今回の分析では、「部長級以上の女性管理職の数」や「従業員一人当たりの研修日数」などが、財務指標である株価純資産倍率(PBR)と相関が強いと確認した。
同社は2021年度、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、自社だけでなくサプライチェーン全体におけるCO2の排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言した。その中で、SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく目標)イニシアチブから「SBT1.5ºC」目標の認定を取得したほか、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際イニシアチブ「RE100」にも加盟した。また2030年・2050年の社会の姿を想定し、事業ごとの気候変動によるリスクと機会を予測する「気候シナリオ分析」を行うプロジェクトも開始した。
NECは社会公共性の高い事業を展開していることから、サイバーセキュリティと情報セキュリティを自社の重要課題と位置付け、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer 2.0」や米国国立標準技術研究所(NIST)の「サイバーセキュリティフレームワーク1.1版」に準拠した対策を推進している。2021年度は、日本IT団体連盟からセキュリティ対策で特に優良で模範となる企業として「星」を獲得したという。NECの対策状況は「情報セキュリティ報告書」を通して顧客や投資家などのステークホルダーに開示し、適正な評価を目指している。
同社は、「2025中期経営計画」の一つ「従業員エンゲージメントスコア50%」の達成に向けて、ダイバーシティーの加速や働き方改革を進めている。2021年度は、最高経営責任者(CEO)の思いを直接従業員に伝え、対話を行う「タウンホールミーティング」を国内で10回、海外で26回開催し、延べ約17万人の従業員が参加した。その結果、2021年度のスコアは前年度から10ポイント向上し、35%となった。
不確実性が高く急速に変化する時代において、同社は社外の声を定期的に取り入れる体制が自社の方向性の確認と取り組みの改善に不可欠であるとしている。その考えを実践する場として、最高財務責任者(CFO)とサステナビリティーの推進に携わる担当役員の諮問委員会「サステナビリティ・アドバイザリ・コミッティ」を設立した。
同社は、グループ全体が共通で持つ価値観・行動の原点「NEC Way」の「Principles(行動原則)」において「人権の尊重」を掲げている。その具体的な取り組み指針「NECグループ人権方針」を国連の「ビジネスと人権の指導原則」(UNGP)に沿った内容に改定した。これにより、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指している。
こうしたESGへの取り組みが評価され、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのサステナビリティーに関する評価指標「Dow Jones Sustainability Indices World Index」の「World」と「Asia Pacific Index」に2年連続で選定されたほか、英FTSE RussellのESG指標「FTSE4Good Index Series」と米MSCIのESG指標「MSCI ESG Leaders Indexes」にも連続して選ばれている。
また、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用した5つのESG指数「FTSE Blossom Japan Index」「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI日本株女性活躍指数」(WIN)、「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数」にも継続して選定されている。
環境分野においては、国際的な非営利組織のCDPから気候変動、水セキュリティの2部門において3年連続で「A」評価を受けているほか、サプライヤーエンゲージメント評価においても2年連続で最高評価「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に選ばれている。さらに、サプライヤー企業のサステナビリティーを評価するプラットフォーム「EcoVadis」では、業種別評価対象企業の上位1%に相当する「プラチナ」に格付けられている。