進展の鍵は、あらゆるメンバーが踏み出す一歩--Indeedが取り組むジェンダー平等

大場みのり (編集部)

2022-07-04 07:00

 あらゆる物事がデジタル化する現在、IT業界は将来性などの観点から就職先として人気を集めている。だが、男女比の偏りやジェンダーバイアス(男性/女性という性別に対する思い込み)などの課題も存在する。

 Indeed Japanが2022年3月、IT技術関連職として働く人々に実施した調査によると、チームや部署の男女比について「男性が6割以上(女性が4割以下)」と回答した割合は全体の73.2%に上ったという。また。男性の25.9%、女性の36.5%が「自身の性別によるデメリットを感じたことがある」と回答。男性が感じるデメリットの上位には「労働時間が配慮されにくい」「体調不良などで休暇を取る際に理解を得にくい」「勤務場所が配慮されにくい」、女性の上位には「昇進・昇格しにくい」「仕事を任せてもらいにくい」「実力で評価されにくい」などが挙がった。

 Indeedは世界全体で「We help people get jobs.」をミッションに掲げており、あらゆる人々が公平に自分に合った仕事を見つけられる社会を目指しているという。同社には職場の差別や偏見をなくすために従業員が運営するインクルージョンリソースグループ(IRG)があり、日本法人ではジェンダー平等に取り組む「Women at Indeed」、障がいのある人々を支援する「Access Indeed」、LGBTQ+の人々への理解を深める「iPride Inclusion Group」、多文化交流を行う「International Inclusion Group」が活動している。

 今回は、アジア太平洋(APAC)の4カ国(日本、シンガポール、インド、オーストラリア)においてDI&Bの責任者を務めるダイバーシティ&インクルージョン シニアマネジャーのアンソニー・大輔・エストレラ氏と、APACにおけるIRG全体をマネジメントするGlobal Inclusion Programs DI&B Program Specialistの佐藤祐子氏に、ジェンダーという切り口で同社の平等に向けた取り組みを聞いた。DI&B(ダイバーシティー、インクルージョン&ビロンギング)とは、多様な人材を生かすとともに、従業員の帰属意識を醸成することを指す。

ダイバーシティ&インクルージョン シニアマネジャーのアンソニー・大輔・エストレラ氏(右)とGlobal Inclusion Programs DI&B Program Specialistの佐藤祐子氏(左)。Indeed Japanのオフィス入り口には、グローバルでのミッション「We help people get jobs.」が掲げられている
ダイバーシティ&インクルージョン シニアマネジャーのアンソニー・大輔・エストレラ氏(右)とGlobal Inclusion Programs DI&B Program Specialistの佐藤祐子氏(左)。Indeed Japanのオフィス入り口には、グローバルでのミッション「We help people get jobs.」が掲げられている

 Indeedは2030年までに、上級管理職・管理職・その他従業員の男女比率を半々にすることを目指している。同社の世界全体の男女比は、2021年時点で男性が57.6%、女性が42.2%、ノンバイナリー(性自認が男/女どちらかには当てはまらない人々)が0.02%となっている。

 「多様な属性の人が意見を出すことで、会社としてより良い製品・サービスを生み出せる。同じような人が同じ部屋に集まって同じような会話をしていると、アウトプットも毎回同じようなものになってしまう。そこで新しい風が入ってくれば、議論が活性化し、新しいアイデアも生まれる」とエストレラ氏は語る。

 女性従業員が長いスパンで活躍できるよう、エストレラ氏が所属するDI&Bチームらは現在、インフラの整備に取り組んでいる。子供を持つ女性は妊娠・出産・子育てと昇格のタイミングが重なるケースが多いことから、「産休・育休に入る前」「入っている間」「職場に復帰する際」のロードマップを作り、各段階の支援を拡充・可視化する。その上で、採用における女性比率の向上・平等な昇格・離職率の低下を目指すという。

 ロードマップでは、産休/育休前に利用可能な福利厚生制度を紹介したり、休業中にニューマザー/ファザー向けの支援コミュニティーを用意したり、職場復帰時にマネージャー向けの研修を実施したりすることを検討している。

 エストレラ氏がインフラ整備に注力する背景には、過去の経験がある。同氏は10年以上前、大手日系企業で人材育成を担当していたが、当時は経営層からの「とにかく女性を管理職に上げよう」という声のもと、いわゆる「数合わせ」に力点を置き、ジェンダー平等の取り組みが表面的なものになってしまった。

 その結果、男性従業員は抵抗感を抱き、管理職となった女性従業員は「自分は本当に実力で昇格したのか」と疑心暗鬼になってしまっていたという。「本来であれば昇格制度をもっと客観的にすべきだった」とエストレラ氏は振り返る。

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