企業を構成する要素で最も重要なのが「従業員」だ。しかし、日本の企業は従業員の働く意欲を上げる施策を取っているだろうか?
日本マイクロソフトが6月に開催したオンラインイベント「ハイブリッドワーク 2022~リモートワークの先へ! 新しい働き方の多様性」で「個人と組織のパフォーマンスを引き出す鍵となる! 従業員エクスペリエンスの真価」と題されたセッションでは、「従業員体験」の重要性が語られた。
日本マイクロソフトがLinkedInやGlint、Gallupの調査結果をまとめたデータによれば、従業員の94%が「学習や人材育成へ積極的に投資する企業で長く働きたい」と回答している。当然ながら、自発的な企業への貢献意欲である「エンゲージメント」の高い従業員は、異なる従業員よりも定着率が12倍高く、従業員エンゲージメントが高い企業は顧客満足度も10%高い。収益性では21%も高まるという。
Microsoftが3月に発表した「Work Trend Index」は、31市場3万1102人の従業員または自営業者を対象にした調査だが、53%の従業員は「パンデミック(感染症の世界的流行)前より健康や“ウェルビーイング(心身の健康)”を優先」し、50%のリモートワーカーが「ハイブリッドワーク移行前よりも職場での孤独感が強まった」と回答。1980~1995年に生まれた「ミレニアル世代」と1996~2015年に生まれた「Z世代」の52%は年内の転職を検討している。
こうしたことから、日本マイクロソフト モダンワーク&セキュリティ本部 プロダクト マーケティング マネージャー 加藤友哉氏は「企業は以前と異なる価値の提供が求められている」と指摘した。
だが、従業員体験における世界と日本の意識はわずかながらも差が生じている。前述の設問にあったウェルビーイング優先度は37%(グローバルは53%)。「1年前と比較した生産性の維持・向上度」は71%(同81%)。「経営幹部の行動が従業員の期待に食い違いが生じている」と回答したマネージャーは61%(同54%)に上った。
日本マイクロソフト 執行役員 常務 人事本部長 BARRIOS Christian氏は「フレキシビリティー(柔軟性)が座右の銘の一つ。ハイブリッドワークを実現する上で重要な概念だ」と主張する。リモートワーク環境も個々の従業員で異なり、ワーキングマザーや介護中、家人の有無など多種多様だ。「われわれは各種を受け入れるフレキシビリティーがある」(BARRIOS氏)
コロナ禍の企業で従業員体験の重要性が高まっているが、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY)ピープル・アドバイザリー・サービス パートナー 水野昭徳氏は従業員体験について「従業員満足度、従業員エンゲージメントに続いて、従業員のパフォーマンスを左右する概念として注目されている」と現状を説明。続けて水野氏は「採用から退職に至る各場面において、従業員の期待と現実のギャップを明確にする。その際に発生するペイン(痛み)を解決する」ことで従業員体験の向上につながると解説した。
一方で、従業員体験の改善は単に従業員を幸せにするためではなく、企業の最終利益を拡大する従業員エンゲージメントの育成が目的。従業員体験向上は最終的に企業の収益向上につながると主張する。
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EYが22カ国1万7000の従業員と1500人以上の経営者を対象にした調査「EY Work Reimagined 2022 Survey」によれば、80%の従業員が「週2日以上、平均2.9日のリモートワーク」を希望し、79%は「従業員へのやりがいと報酬を含めたトータルリワードの見直し」を求めている。後者に関しては83%の経営者も同意した。