DocuSignは、電子署名とデジタルトランザクションマネジメント技術を提供する企業だ。その日本法人ドキュサイン・ジャパンのカントリーマネージャーに竹内賢佑氏が就任して半年が経過した。電子契約市場の動向や同社の今後などについて竹内氏に聞いた。
竹内賢佑氏
竹内氏は、2022年7月11日の就任からの6カ月について、変革の一番激しいものだったと振り返る。米国本社の最高経営責任者(CEO)のDan Springer氏が6月に退職し、後任のAllan Thygesen氏が9月に着任するといった体制変更がその背景にあるという。
同社電子署名「DocuSign eSignature」の有償版は現在、世界180カ国、100万社以上で導入されている。同社は、電子署名市場のおよそ6〜7割を占めるメジャープレーヤーと竹内氏は説明する。
ワールドワイドでの同社ビジネスは、新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが急増したものの、その後は成長が鈍化。ただし、なだらかながらも正しい成長の度合いになったとの考えを竹内氏は示す。
米国では、国土が広く、郵便事情もあまり良くないことから、契約書を紙でやりとりする代わりに電子署名を使ったソリューションは日本に比べて5〜10年早く進んでおり、コロナ禍前でも「大企業のほとんどが電子署名をフル活用している」(竹内氏)状況だった。一つの企業内で未導入の部署があるといった場合や技術導入が遅くなりがちな政府系組織を除けば、電子署名の導入自体は“一巡している”こともあり、コロナ禍の収束とともにニーズは“ホット”ではなくなったという。
それに代わり、契約書の準備や格納といった電子契約の前後にある部分のソリューションに軸足が移っていると竹内氏。契約ライフサイクル管理(CLM)で見られる「作成」「交渉」「署名・捺印」「保管」「検索・分析」といった契約書に関わるプロセスを一元管理する方向に進んでいるという。DocuSignも電子署名の会社からプラットフォーム型ソリューションの会社へと変わろうとしているところだと同氏は説明する。
一方、日本ではハンコ文化・紙文化があり、国土もさほど大きくなく郵便事情がいいという理由から、コロナ禍前での電子署名の浸透率10%に満たない状況だった。しかし、コロナ禍をきっかけとして半強制的に業務のデジタル化が進んでおり、電子署名も例外ではなかった。そして、その傾向は現在も止まらない状況だと竹内氏。「ニーズが減ることなくあり、成長局面がまだ続いている」という。
現在、電子契約・電子署名サービスを導入している企業・自治体は約3割に達し、普及が進んでいると言われている。しかし、社会全体で見るとまだまだ浸透していないのが実情と竹内氏は述べ、導入企業が電子署名を実際に使っている契約業務の割合は数%との考えを示した。
企業は、社内にデジタルトランスレーション(DX)を推進する部門を設け、業務のデジタル化ために電子署名を導入しているものの、利用開始が経営層に報告されたら終わりということが多々あると竹内氏。紙を使うことで機能している仕組みを変えることに対する抵抗感などから、導入に対する賛同が得られないケースが見られるという。