日本で5Gの商用サービスがスタートして丸2年を迎えようとしている。通信速度はもちろん、低遅延や同時接続数の多さなどの特徴を持ち、企業での活用も期待されている。一方で、5Gの進展が遅いという声も聞こえてくる。通信機器大手エリクソン・ジャパンの代表取締役社長で戦略事業を担当する野崎哲氏に、法人事業を中心に5Gの現在について話を聞いた。
エリクソン・ジャパンの代表取締役社長で戦略事業を担当する野崎哲氏
--Ericssonの現在の事業概要と5Gの動向について教えてください。
5Gは着実に広がっており、2022年11月時点で5Gの商用ネットワークは228を数えます。そのうち、半分以上となる141のネットワークがEricssonの技術を利用しています。
5Gの多くが、既存の4Gネットワークとひも付く形ですが、4Gにひも付かないスタンドアロン(SA)の5Gネットワークは35あり、このうち21をEricssonの技術が支えています。人口カバー率は32%程度になります。このように、中国を除く全世界のトラフィックの約半分がEricssonの無線ネットワーク技術を使っており、5Gについては、グローバル市場でリーディングポジションにあるといえます。
裏を返すと、Ericssonは大きな責任を担っています。そこで、2021年に「想像を超える世界を実現するつながりを創造していく」という新しいパーパス(存在意義)を掲げました。このパーパスを通じて、2030年までに実現したいビジョンとして、「無限のつながりが生活を豊かにし、ビジネスを革新し、持続可能な未来を開拓していく世界」と定めました。
私たちのさまざまな取り組みは、全てこのパーパスとビジョン実現に向けたものです。具体的な事業としては、通信事業者、産業、広範な社会と大きく3つの領域で5Gを提供します。
--法人向け事業はどのような戦略で進めていますか。
土台にあるのは、モバイルネットワークにおけるリーダーシップです。Ericssonは、テクノロジーで先進的な技術を開発するために、年3兆円規模の売り上げのうち5000億円を研究開発に投資しています。大事なことは、「良い技術」だけではなく、「良い技術をグローバルでスケールのある形で展開する」こと。そうしなければ、良い技術であっても、手の届かないものになります。そこで、標準化の推進と貢献も私たちの重要な取り組みです。
法人向け事業は、このような基盤の上で、選択的・集中的に拡大していきます。現在、プライベート5G(日本ではローカル5Gと呼ばれる)などの「ワイヤレスネットワーク」、5Gの利用シーンを拡張するのを支援する「コミュニケーションプラットフォーム」の2つを柱にしています。
コミュニケーションプラットフォームは、開発者にネットワークのAPIを使ってサービスを開発してもらうという取り組みになり、既にプラットフォームを提供しているVonageを2022年7月に買収しました。Vonageのブランドはそのままで展開しており、日本でも日本のVonageと密に連携して進めていきます。