通信機器大手のEricssonは5月11日、オンラインイベント「UnBoxed Office」を開催した。日本でもスタートした5G(第5世代移動体通信)サービスについて最高経営責任者(CEO)のBörje Ekholm氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、ニーズはさらに高まっているとし、5Gで成功するためにはネットワーク品質が大切と主張した。
EricssonのCEO、Börje Ekholm氏
自宅から基調講演を行ったEkholm氏は、画面の向こうの聴講者に向かって、「ニューノーマルへようこそ」と述べてスピーチを始めた。COVID-19により世界はこれまでとは違うものになった。世界中で「Stay Home」が呼びかけられ、最前線で医療に携わる人々に感謝する中で、通信インフラの重要性は高まる一方だ。
「この2カ月でわれわれはこれまでにない変革的な経験をしている。わずか数日でトラフィックはオフィスエリアから居住エリアにシフトし、ネットワーク全体のボリュームは20%程度増加している。これを大規模に劣化させず実現していることを誇りに思う」とEkholm氏。8万5000人いる同社の従業員も在宅勤務体制となり、世界中にある同社のグローバルネットワークセンターで顧客のネットワークオペレーションを支援するスタッフも在宅に切り替わっているという。「性能へのインパクトはゼロだ」とEkholm氏は胸を張る。
つながる世界を支える通信インフラで、重要なものは何か――との問いにEkholm氏は、「ネットワーク品質」を何度も強調してみせた。
「約10年間、サービスプロバイダーの中で高い収益を得て成長するフロントランナーが成功している要因を分析してきた。土台にあるのは注意深く設計したネットワークで、この上に投資効果を生む差別化されたサービスを構築している」(Ekholm氏)
同社が30以上の国で4G(第4世代移動体通信)ネットワークを調べたところ、安定した通信、ハイスピードなどの特徴を備えた品質の高いネットワークは、ARPU(1ユーザー当たりの売り上げ)の向上と解約率の低下の両方またはどちらかにメリットを与えており、これが好業績につながるというサイクルが生まれている。
この結果、Ekholm氏のいうフロントランナーは、2014年から年平均8.5%増で成長しているのに対し、それ以外のオペレーターは1.95%減となっていることが分かった。また、その他の調査では、ネットワークの品質はマクロ経済の要因に次ぐ解約の要因になっていることも判明したという。
事業者のうち収益や売上増に成功しているフロントランナー(青)とそれ以外の事業者(緑)の差が明確になっている
Ekholm氏は、「ネットワーク品質に投資することで顧客をハッピーにできる。ネットワークが貧弱だと顧客はいなくなる」とし、「品質は成功の土台」と断言した。
高品質なネットワークは、5Gでさらに重要になるとも述べた。「5Gにより、事業者は先行者利益を得られる。5G市場の開拓により売り上げを増加させている事業者も出てきている」とEkholm氏。「今後3年で、5Gビジネスがどのようになるのかが固まってくるだろう」と続けた。
5Gへの勢いは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて加速するとも見る。調査では、「消費者は5Gに最大20%のプレミアムを払ってもいい」と考えていることが分かったという。Ekholm氏によれな、そこでは4Gと違う体験を提供する必要がある。企業も5Gに期待を寄せており、デジタルトランスフォーメーションと関連づけているところも多いとのことだ。「10の産業を調べたところ、デジタル化はわれわれの顧客にとって最大7000億ドルのチャンスをもたらす」(Ekholm氏)
Ericssonは、その5Gで「リーダーだ」とEkholm氏はいう。5Gの通信機器ではHuawei Technologies、Nokiaと競合しているるが、Ekholm氏は「世界最初の5GネットワークはEricssonの機器でローンチした。われわれの5G技術は現在、4大陸・30以上のライブ商用ネットワークで使われている」と自信を示した。世界で91の事業者と5Gで商用契約を交わしており、シェアはこの1年で拡大しているという。