ビジネスチャットを提供するワークスモバイルジャパンは先ごろ、年次カンファレンス「LINE WORKS DAY 23」を開催し、「LINE WORKS」の導入社数・利用者数やAIへの取り組みを発表した。代表取締役社長の増田隆一氏にその背景などを聞いた。
増田氏は、2022年6月に現職に就任。それからの9カ月ほどはLINE WORKS DAYで発表したAI事業などを準備するのが主だったと振り返る。
増田隆一氏とキャラクターのBoo(右)
同カンファレンスではLINE WORKS導入社数が43万社、利用者数450万ユーザーに達したことが明かされている。要因について、増田氏は地方を挙げる。「日本にはエンタープライズ企業は4000社ぐらいしかない。それよりは地方の中小企業が圧倒的に増えている」
地方の中小企業への取り組みを強化するため、同社は2022年7月、LINE WORKSの成長率が高かった九州に支社を開設している。九州新幹線沿線には製造、建設、不動産業の企業が多く、利用者数が増加しているという。また、パートナーの活動も活発で、市場として大きく伸びていると増田氏。
一方で、今後に視線を向けると、ビジネスの成長は、コロナ禍の影響を受けて押し上げられていた分が落ち着くことにより、指数関数的な伸びは見られなくなるとの考えを示す。今後も成長を続けるものの、“定規で引いたような”ものになるという。そして、それを下支えするものとしてAI事業を増田氏は挙げる。
ワークスモバイルジャパンは、LINEのAI事業「LINE CLOVA」を4月1日に統合することをLINE WORKS DAY 23で発表した。LINE WORKS上でのAI活用を進め、各種機能におけるAIの実装を通じて、さらなるサービスの強化を目指すという。
この統合は、親会社であるNAVERの事業統合がきっかけとなっているという。元来BtoC企業である同社は、BtoB事業を展開していた日本での成長を目にしたことで、BtoB事業の可能性に気づいたと増田氏。そのため、NAVERは、クラウドサービスを提供するNAVER Cloudの傘下にビジネスチャットのLINE WORKS、AIの「CLOVA」、翻訳サービスの「Papago」、ウェブブラウザーの「Whale」を提供する事業を統合することを発表した。この動きに呼応する形で日本ではLINE CLOVAの統合が決まったという。
とはいえ、「AIだけでビジネスをやろうと思っていない」という。そこには、「IT技術は人に寄り添ってこそ意味がある」という同社の考え方がある。「LINE WORKSは、多くの人に使っていただいている。その人たちに何を提供できるのかというブランドパーパスのようなものを考えると、現場で働く人たちにとって働きやすい環境を実現するためにAIを活用するという方が近い」
「テクノロジーは言ってみれば半導体部品みたいなもの。NAVERでBtoB事業が統合されたことで、いろいろな半導体部品が手に入った。その部品を使って、より良い仕事ができるサービスをいかに提供するか。われわれの一番の役割は、そこにある」と増田氏。AIを社会実装することで働き方や生活がどう変化するかをLINE WORKSのサービスを通して感じてもらえるよう、挑戦していきたいという。