調査

熱心な顧客には何を提供できる?--新組織「アクセンチュア ソング」の調べ

大場みのり (編集部)

2023-04-26 12:06

 アクセンチュアは4月25日、2023年に企業が留意すべきトレンドや取るべきアクションをまとめたレポート「Accenture Life Trends 2023」の内容を発表した。同レポートは、2008年から発表されてきた年次レポート「Fjord Trends(フィヨルドトレンド)」を継承したもの。

 Life Trendsは、企業価値の向上を支援する組織「Accenture Song」に所属し、世界40カ所以上で活動するデザイナー、クリエイター、技術者、社会学者、人類学者が洞察や知見を持ち寄って作成したという。以前は「Accenture Interactive」という名称で活動していたが、2022年4月に全世界の組織をAccenture Songとして統合し、企業価値の向上に取り組んでいる。

 Accenture Songは、複数の事業を展開するセブン&アイグループの1500万人以上の会員基盤を構築し、グループ各社を横断した購買を促進したり、みんなの銀行では従来堅苦しく複雑なイメージがあった銀行サービスをシンプルで分かりやすい形に変革する支援をしたりしている。

(左から)アクセンチュア Accenture Song デザインリーダーシップ エグゼクティブの番所浩平氏、同デザインリサーチ アソシエイト・ディレクターのRebekka Bush氏、同グロース・ストラテジー マネジング・ディレクターの小林正寿氏(写真提供:アクセンチュア)
(左から)アクセンチュア Accenture Song デザインリーダーシップ エグゼクティブの番所浩平氏、同デザインリサーチ アソシエイト・ディレクターのRebekka Bush氏、同グロース・ストラテジー マネジング・ディレクターの小林正寿氏(写真提供:アクセンチュア)

 今回のレポートで定義された2023年のメタトレンド(個別の事象をもたらす大きな流れ)は「Control and power(コントロールとパワー)」。同日開催の説明会に登壇したAccenture Song デザインリサーチ アソシエイト・ディレクターのRebekka Bush(レベッカ・ブッシュ)氏は「世界は大きく変化しており、私たちはすさまじい衝撃を容赦なく受けている。人々の反応はさまざまだが、皆それぞれ工夫を重ねてどうすることもできない状況をコントロールしようと試み、安定を生み出そうとしている」と説明した。

 その上でBush氏は「I will survive(不安定な社会環境に適応する⽣活者たち)」「I’m a believer(コミュニティーの⼒から⽣まれるブランドの未来)」「As it was(かつての姿ではないワークスタイルの在り方)」「OK, Creativity(AIと共に歩むクリエイティビティー)」「Signed, sealed, delivered(デジタルウォレットと私のデータの⾏⽅)」という5つのトレンドを紹介した。各トレンドの名称は、著名な曲のタイトルに由来しているという。

I will survive(不安定な社会環境に適応する⽣活者たち)

 生活者を取り巻く環境には、さまざまな危機が押し寄せている。「コリンズ英語辞典」による「2022年を表す語」には、長期的に不安定な状況を示す「Permacrisis(パーマクライシス)」が選出された。生活者は人間が元来有する適応能力を生かし、さまざまな行動を取り始めている。そうした状況においてブランドは、彼らを多面的に捉え、寄り添うことが求められるという。

 生活者の適応行動には、「Fight(声を上げて闘う)」「Flight(第3の選択肢を模索する)」「Focus(自身がコントロールできる世界に集中する)」「Freeze(希望を胸に押し込み、距離を取る)」などが見られる。Fightでは、不平等や環境問題などに対する抗議活動、賃金や労働環境をめぐるストライキ、Flightでは住宅価格の高騰による地方への移住、生活費高騰によるサブスクリプションサービスの解約、Focusでは、ニッチなトピックに閉じたコミュニティーへの没頭、Freezeでは政治的な事柄への無関心化、自己実現の放棄などがある。

 ブランドやデザイナーには、こうした生活者の変容を捉えることが求められている。人々は「環境に配慮していることを重視している一方、時に価格が安い方を選んでしまう」など、矛盾した行動を取ることもあるとAccenture Songは説明する。そのためブランドは、生活者の多面性やブランドへの期待を理解した上で、より本質的に寄り添うことが必要になるという。

I’m a believer(コミュニティーの⼒から⽣まれるブランドの未来)

 大手SNSがブランドやインフルエンサーからの情報を優先的に表示させるようになり、生活者はより帰属意識を感じられるソーシャルな場を求める傾向がある。そうした中、複数のブランドはトークンを介してロイヤリティーの高い顧客と密につながり、彼らを製品やサービスづくりに招き入れる動きを加速させている。

 例えば、スポーツカジュアルブランド「LACOSTE(ラコステ)」は、ブランドを象徴するポロシャツを記念して1万1212点の非代替性トークン(NFT)コレクションを発表。トークンの保有者には、ブランドの将来に対する意見を届ける権利を付与した。

 Accentureの調査によると、直近6カ月で「新しい趣味を始めた」「新たなコミュニティーに参加した」といった声が多数挙がったという。オンラインでは、掲示板投稿型ソーシャルサイト「Reddit」、チャットサービス「Discord」、ゲーム配信用プラットフォーム「Twitch」などでニッチな話題を語り合うコミュニティーが広がりを見せている。

 NFTをはじめとするWeb3技術の普及により、ブランドの提供価値は「分散型自律組織(DAO)的に機能する顧客コミュニティー」を起点に生まれるとAccenture Songは提言する。ブランドは、オンラインコミュニティーを活用し、ロイヤリティーの高い顧客にどのようなオーナーシップや機会を与えられるのかを考える必要がある。また、顧客コミュニティーが持つボトムアップな価値観を尊重しつつ、ブランドとして成し遂げたいことをトップダウンで調整することが重要だという。

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