「楽な会社がいいわけではない。仕事にはつらいことも楽しいこともあるが、そういった苦楽を共にして、会社も自分も成長できるのがいい会社だと思っている」--マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏の言葉だ。同社は、Great Place to Work Institute Japanが発表した「2008年 日本の『働きがいのある会社』」のトップに選ばれ、樋口氏がその理由について講演を行った。
今回「働きがいのある会社」を選ぶにあたって評価基準となったのは、「誇り」「公正」「信用」「尊敬」「連帯感」の5つだ。マイクロソフトは、連帯感以外のすべての項目でベスト5入りを果たすというバランスの取れた結果となった。「誇り」という項目では、社員の仕事に対する意気込みなどが基準となるが、樋口氏は「『会社に行くのが楽しい』『会社が近づくと早足になる』『仕事のことを考えるとわくわくして寝られない』という社員もいるほどだ」と述べた。
唯一ベスト5に入らなかった「連帯感」については、「個人主義的な面があるため、これは反省材料だ」と樋口氏。「マイクロソフトはメールのシステムを提供する企業ではあるが、メールに依存しすぎるのはよくない。やはり直接コミュニケーションを取ることは大切だ」と話す。
マイクロソフトでは、働くことの価値を高めるため、パフォーマンスマネジメントや職場の環境向上を目的とした「myMicrosoft」という取り組みを実施している。この取り組みでは、社員意識調査として仕事や社風、上司についてなどのアンケートを年1回実施することや、在宅勤務制度、フレックスタイム、有給の看護休暇の導入、さらには新入社員や次世代のリーダーを育成するためのメンタリングプログラムなどを用意している。
樋口氏は、「会社の経営力とは、社員1人1人の力と、その社員の力を発揮できる企業文化があることが大切。そして最後に、会社の方向や戦略が伴うことだ」と話す。また、「マイクロソフトも完ぺきではなく、閉塞感のある部署も存在するが、会社の透明感は必要だ。健全な組織文化では、悪いことは悪い、正しいことは正しいと言えることが重要となる。それがなくなると、市場の声や顧客の声が聞こえなくなり、その結果、経営力がなくなってしまう」と述べた。