マイクロソフトが、エンタープライズビジネスのコンセプトとして掲げる「People-Readyビジネス」。この言葉をさまざまなメディアで目にした人も多いのではないだろうか。
マイクロソフト執行役専務、エンタープライズビジネス担当の平井康文氏は、「あれは、単なるキャンペーンや一時的な広告ではなく、根幹に深い意味が込められている」と語る。同氏に、「People-Readyビジネス」の意味や、昨今、企業情報システムの中で生産性を高めるための技術として急速にプレゼンスを高めつつある「検索技術」と、同社のエンタープライズ戦略との関わりについて聞いた。
--昨年来、「People-Readyビジネス」という言葉を多くのメディアで目にするようになりました。エンタープライズ戦略を表すコンセプトとのことですが、その意味について詳しく教えてください。
マイクロソフトにおいては、ここ数年間で、エンタープライズのお客様とのリレーションシップを構築し、その中で、お客様の経営課題に対するソリューションを提案型で提供していくという体制が定着したように感じています。「People-Readyビジネス」は、そうしたエンタープライズ向けビジネスのビジョンであり、中核であり、これからお客様の経営環境に対して提案を行っていくすべてであると言っても過言ではないでしょう。
マイクロソフトはこのところ、Windows Vistaや2007 Office Systemなど、単体製品のローンチを立て続けにやってきました。また、年末には次期Windows Serverである「Longhorn Server」が控えていますが、これでひとまず一巡する形になります。
それを受けて今度は、単体の製品の価値訴求ではなくて、それらを組み合わせて、「“People-Readyビジネス”を実現するのための基盤はこういうものです」というご提案をしていきます。今後、予定されている新たな製品やサービスメニューなどは、すべてこの「People-Readyビジネス」というコンセプトのもとで発表していこうと考えています。
--日本では、People-Readyビジネスの副題として、「社員力を、経営力に」という言葉が付いていますね。
この「社員力を経営力に」というサブタイトルは日本独自のものです。
2006年の9月にこのビジョンの展開を始めましたが、それまでに市場調査を2度行い、結果的に日本での導入は1年ほど遅らせたのです。
興味深いのは、最初の調査の際には「意味が分からない」という反応があったのに比べ、その1年後に同じ調査を行ったところ、まるっきり違う反応が返ってきたことです。その1年の間に何があったかを考えると、個人情報保護法や内部統制に関する法律などがクローズアップされ、コンプライアンス、ガバナンスということが、単にITシステムの中だけでなく、企業経営そのものとして取り組むべき課題として認知されるようになっていたのです。
「コンプライアンス」「ガバナンス」の機運が高まることで、経営者の間には、その対応で仕事の生産性が落ちたり、準備のコストがかかったり、さらには最終的にビジネスプロセスがスムーズに流れなくなるのではないかといった懸念も出てきていました。
そうした法制対応への圧力の中で、いかに企業の生産性を確保すればいいかという問題に直面するにあたって、「個々の社員の力」というものが、改めてクローズアップされました。われわれは、ちょうどそのタイミングで、「社員力を、経営力に」というテーマを掲げ、非常に良い反応をいただいています。