11月30日、マイクロソフトによる「BI Conference 2007 Autumn」が開催された。午前中のゼネラルセッションでは、同社執行役常務ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン氏が登壇。同社のビジネスインテリジェンス(BI)への取組みを披露した。
同氏は今後、ビジネスの成否は現場従業員レベルの情報入手と、その情報への対応スピードがカギを握るという。従って、BIも従来のような経営者レベルだけでなく、従業員の行動を視野に入れたものに変えていく必要があるとのことだ。
これは膨大な量の情報が流通し、情報がビジネスを駆動しているという現在の経済構造を反映したものである。従来、勝負を決めるとされていた情報量の格差は、今後は情報入手と対応に関する「スピード」の格差に変容する。資本を集約するより、こうした情報への対応が可能なビジネスモデルを確立した方が効果的であり、また設備投資よりも情報を扱う人材に投資する必要がある。
さらに言えば、経営者レベルの意思決定は年単位あるいは四半期単位と比較的長期的で、その頻度も少ない。管理者レベルでは月単位あるいは週単位と中期的である。これに対して現場従業員レベルではほぼ毎日、短期的な意思決定を頻繁にしつづけなければならない。まして日本では、顧客に対してもパートナーに対しても求められるサービスの質は高い。だからこそBIは、従業員をカバーすべきであるとマイクロソフトは考えているという。
マイクロソフトのコーポレートポリシーでもある「社員力を経営力に(英語では“people ready business”)」という言葉は、こうした姿勢を端的に示すものだ。
「社員力重視」の一例として、同氏はマイクロソフト自身のマネジメントサイクルを披露した。毎年7月の期初には世界中の現場部門担当者が一堂に会し、前期のベストプラクティスや当年度の部門ごとの戦略、施策を共有する。これに基づき全従業員にはコミットメント(実施するべき具体的な施策)が配られ、毎月あるいは四半期ごとに調整が行われ、四半期ごとには到達度の測定、報告が行われる。
上半期が終了した1月には、世界中の管理者クラスが集まって地域中間報告会議を開く。ここでは上半期の成果や問題点、改善点などを報告、分析する。3月には世界中の役員クラスによって開かれる戦略会議で翌期の全体的な戦略を策定し、5月の上級管理者クラスによる戦略共有会議で具体的なプランに落としこむというサイクルだ。
従業員は日々コミットメントを照会することで意思決定を行う一方で、経営者クラスでは年に1回の大局的な意思決定を行うということになる。
この実現のため、同社では全社員が“MS Web”と称するイントラネットからあらゆる情報とデータにアクセスできるようになっている。例えば、ダッシュボードと呼ばれるウェブベースのKPI(業績評価指標)はいうまでもなく、プロジェクトごとあるいはチームごとのサイトによるコラボレーション、部門別あるいは機能別の情報やプロセス、各種分析レポートや全社的な統計などが対象だ。むろん、社員のポジションに応じた適切なアクセス権限が設定されているのは言うまでもない。
これにより同社は現場レベルでPlan(戦略に基づくコミットメント設定)、Do(必要な情報やプロセスへの迅速なアクセス)、Check(成果のリアルタイムな測定とレビュー)、Action(リソースの再配分)という、いわゆる「PDCAサイクル」を実現していると同氏は語る。