マイクロソフトは7月25日、今後の同社製品およびサービスの開発において、外来語カタカナ用語末尾の長音表記について、ルールの変更を順次行っていくと発表した。
このルールは「英語由来のカタカナ用語において、言語の末尾が-er、-or、-arで終わる場合に長音表記をつける」というもので、このルールに従うと「コンピュータ」は「コンピューター」、「プリンタ」は「プリンター」、「ブラウザ」は「ブラウザー」と表記されることになる。ただし、一部慣用によって音引きを省略する例外もある。ルールおよび例外の詳細については、同社ウェブサイト内の「ランゲージポータル」で配布されている「マイクロソフト日本語スタイルガイド」内にまとめられている。
同社では、このルールについて、現行製品の「次のバージョン」より順次適用を進めるとしており、直近では、8月中に公開予定の「Internet Explorer 8 Beta2」より実装される。なお、現行バージョンのOS製品などに対し、サービスパックなどによってこの表記ルールを適用する予定はないとしている。
マイクロソフトでは、外来語カタカナ用語末尾の長音表記について、これまでJIS用語や学術用語に規定されていない用語について「2音の用語は長音符号を付け、3音以上の用語の場合は省くことを原則とする」という規定(JIS Z 8301:規格票の様式及び作成方法)に即した表記ルールを採用していた。今回、新たに採用される「言語の末尾が-er、-or、-arなどで終わる場合に長音表記をつける」というルールは、国語審議会の報告を元に告示された1991年の内閣告示第二号をベースとしたものとなる。
マイクロソフト最高技術責任者の加治佐俊一氏。
今回の表記ルールの変更理由について、マイクロソフト最高技術責任者の加治佐俊一氏は、内閣告示ルールが、すでに新聞や放送の分野で広く適用されているものであるとの前提を述べた上で、コンピュータが一般消費者の日常必需品となるにつれて、末尾の長音を省略する傾向が強い、工業系、自然科学系の表記に対するユーザーの違和感が増していること、より発音に近い表記が市場ニーズとして求められていること、アクセシビリティ向上の観点から読み上げソフトなどでの発音が自然なものになること、すでに同業界内の多くのメーカーでも採用されており、ユーザーフレンドリーであることなどを挙げた。
英語表記 |
旧表記(現行) |
新表記 |
|---|---|---|
adapter |
アダプタ |
アダプター |
installer |
インストーラ |
インストーラー |
explorer |
エクスプローラ |
エクスプローラー |
scanner |
スキャナ |
スキャナー |
selector |
セレクタ |
セレクター |
driver |
ドライバ |
ドライバー |
buffer |
バッファ |
バッファー |
parameter |
パラメータ |
パラメーター |
folder |
フォルダ |
フォルダー |
browser |
ブラウザ |
ブラウザー |
printer |
プリンタ |
プリンター |
また今回のルール変更は「決して“マイクロソフトが日本語を作っていく”という意識ではなく、我々の提供する製品やサービスにおいて正しい日本語を扱えるようにすることが目的。ユーザーやパートナーに対して、このルールに準拠することを働きかけるものではない」(加治佐氏)ことを強調した。
今回の新ルールは、単なるユーザーインターフェース上の表記の変更であり、実装による混乱はほとんどないだろうとマイクロソフトでは予想している。ただし、限定的ではあるものの「UI表記」をトリガーとして動作するプログラムやマクロ、タスクなどが存在する場合は、今後影響が出る可能性があると注意を促している。また、マイクロソフトの表記ルールに合わせて、ソフトウェア開発、テキストやマニュアルの作成などを行っている企業などは、今後、何らかの対応が必要になる。
発表会には、今回のマイクロソフトによる新表記ルールの導入に賛同する団体の代表として、東京学芸大学教育学部教授であり、テクニカルコミュニケーター協会(TC協会)の会長を務める岸学氏が出席した。
テクニカルコミュニケーター協会会長の岸学氏。
TC協会は、情報機器や電気機器のマニュアルなど、いわゆる「取扱情報」の品質向上やTC技術の発展普及、応用範囲の拡大などを目的に1992年に設立された団体。テクニカルライター、テクニカルイラストレーター、ドキュメントの翻訳や多国語展開に携わる人、ユーザビリティ向上や認知科学、心理学、デザイン、人間工学等の研究者、教育者などから構成されている。今年5月の段階で、法人会員95社、個人会員215名が所属しており、法人会員には、マイクロソフトディベロップメントをはじめ、キヤノン、富士ゼロックス、松下電器産業、リコー、アドビシステムズ、京セラミタ、ソニー、ジャストシステムなど複数のIT関連企業も名を連ねる。
TC協会では2000年に「カタカナ表記検討ワーキンググループ」を結成。使用者が直接見聞きする商品上に表記される外来語(カタカナ)の表記統一のための調査や検討を行っており、2004年12月には、最も表記上のゆれが多い「末尾の長音表記」に関するガイドラインをまとめ、関連する企業や業界団体への賛同を呼びかけてきた。こうした表記の統一は、使用者側の違和感を低減させるほか、ユニバーサルデザインや、子どもへの言語教育の観点からも重要な取り組みであるとする。
岸氏は「今回のマイクロソフトによるルール変更は、TC協会が提言したガイドラインに沿ったものであり、具体的な取り組みであること、同社の影響力の大きさから考えても歓迎すべきこと。学校教育面やユニバーサルデザイン面での波及効果も考えられる」と述べた。
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