「2007年に全世界で生成または獲得、複製されたデジタル情報量は281エキサバイトにのぼった。2011年には約10倍の1800エキサバイトにまでのぼるだろう。こうした中、サーチの重要性はますます大きくなりつつあり、サーチのあり方を再考すべき時が来ている」。IDC Japan グループディレクターの井出和之氏は、東京都内で開催されたベイシス・テクノロジー主催の「次世代エンタープライズサーチフォーラム」にてこのように語った。
井出氏は、デジタル情報量が急速に増え続けている理由について、デジタルテレビや監視カメラなど大容量画像データの増加や、発展途上国におけるインターネット利用が進むことなどはもちろん、非構造化データが増えていること、企業がコンプライアンス対応および災害復旧対策としてデータの複製やアーカイブを実施していることなどを挙げる。
「情報が爆発的に増えるこの時代において、情報をいかに早く、正しく発見し、その情報をいかにして処理するかは、オフィスワーカーの能力、ひいてはその組織の能力に関わる重要な差別化要因となる」と井出氏。入手できる情報量が社内に限られていた時代は、社内の情報を整理し、その中から必要な情報を取り出すという検索手法が使われていて、現在でもこうした手法に頼っている企業も多いと井出氏は言うが、「今は必要な情報が社内の情報システムの中だけにあるわけではない。入手可能な情報ソースすべての中から検索して必要な情報を探し出すといった検索手法に変えなくては」と強調する。
オフィスワーカーの情報検索力が重要なのはもちろんだが、井出氏は企業が外部ユーザーに向けて提供するサーチソリューションもその企業の経営に影響を及ぼすと指摘する。例えばECサイトなどでは、サーチソリューションの善しあしが売上に直結することもあるのだ。
「現在、ほとんどのサイトではサイト内検索ができるようになっているが、実際には使いにくいケースも多い。あいまい検索ができないサイトはその典型だが、ある程度のあいまいさを許容した上で検索結果を示さなくては、検索の精度が上がらない。逆にこうした検索がうまくできると差別化につながる」(井出氏)
また井出氏は、画像検索も今後イノベーションが期待される分野だと述べる。同氏は、Like.comの提供する「likethis」を例に挙げ、「キーワードを入力して検索するのではなく、写真をアップロードするとその写真に似たような画像を探し出すというサービスを提供している」と話す。同氏によると、現在はこうした画像検索の解析技術は非常に困難で、このサービスにおいても処理に時間がかかっているというが、「今後このようなサービスは増えてくるだろう」と述べている。
一方、エンタープライズサーチの分野では、「企業の情報システムと検索技術を結びつけるケースが増える」と井出氏。また、企業の中に埋もれている有益な情報を検索の前段階からいかにして集め、検索結果にうまく反映させるかといったユーザーエクスペリエンスも重視すべきだとした。
最後に井出氏は、検索技術を選択する際のポイントとして、「まずは、社内向けなのか外部のユーザー向けなのか、検索対象とするのはテキストなのか画像なのかなど、ソリューションを導入する目的を明確にすることがひとつ。また、検索はほかの技術と組み合わせて使うことが多く、単純に検索ソリューションだけで売上が上がったかどうかは見えにくいため、ROI(投資対効果)にばかり目を向けるべきではない。良い検索ソリューションは作業の効率化にも貢献するので、長期的にはリターンが得られることも考慮して導入に踏み切るべきだろう。さらには、検索結果だけでなく、データ量や前処理など検索の準備段階における設計にも留意しなくてはならない」と述べた。