日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は2月28日、グリッドコンピューティング普及に向けてハード、ソフト、導入・教育支援サービスをパッケージ化した「IBM Grid and Growオファリング」の販売を開始した。価格は最小構成で275万円からとなっている。同社によれば「別々に購入するよりも約35%割安な価格」だという。
今回提供されるのは、ブレードサーバ「IBM eServer BladeCenter」シリーズをハードウェアとして、OSと計算処理を各ノードに配分するためのグリッドミドルウェア(ワークロード管理ソフト)、導入・教育支援サービスを1つのパッケージにして提供する。BladeCenterは、CPUに64ビットのIntel Xeonを搭載した「BladeCenter HS20」、AMD Opeteron搭載の「BladeCenter LS20」、IBMのPowerPCを搭載した「BladeCenter JS20」から選ぶことができる。
「Grid and Growオファリングは小さく始めることができる」と説明する星野裕氏 |
OSはレッドハットの「Red Hat Enterprise Linux」とノベルの「SUSE LINUX Enterprise Server 9」、「Windows Server 2003 Standard Edition」、IBMのUnix「AIX 5L」から選択できる。グリッドミドルウェアも、プラットフォームコンピューティングの「Platform LSF」、アルテアエンジニアリングの「Altair PBS Professional」、米United Devicesの「Grid MP」(国内の代理店は住商情報システム)、IBMの「LoadLeveler」から選択できる。
最小構成価格275万円となるのは、ハードウェアとしてBladeCenter HS20、OSがRed Hat Enterprise Linux、グリッドミドルウェアにPlatform LSFを採用した「Grid and Growエントリー構成」と呼ばれる組み合わせだ。
この組み合わせにはBladeCenter3枚での構成例だが、ハーフシャーシライセンスが適用されるため、BladeCenter6枚までならば、OSとグリッドミドルウェアの追加ライセンスは不要となる。エントリー構成と同じ組み合わせでBladeCenterを7枚にした「Grid and Growスターター構成」は500万円からだが、この組み合わせではBladeCenter14枚までならば追加ライセンスは不要となっている。
どの組み合わせでも提供される導入・教育支援サービスは、ハードウェア設置、OS導入、グリッドミドルウェア設定など基本的なグリッド環境の構築にとどまる。同サービスでは、オプションサービスも用意されている。オプションサービスでは、ユーザー企業がすでに利用しているアプリケーションがグリッドに対応するかどうかを調査したり、構築されたグリッドシステムのパフォーマンスに関するテストと文書化作業なども提供される。
日本IBMの先進システム事業部で事業部長を務める星野裕氏は、今回のGrid and Growオファリングについて、「グリッドコンピューティングをマスに広げていくためのもの」と説明している。そのため、「導入対象を中堅、中小企業にも広げていく」(星野氏)としている。
Grid and Growオファリングは、同一のプラットフォーム上に単一のアプリケーションを稼働させる、いわばクラスタリングのシステムとなる。その機能の目的は、「計算結果を得るまでの時間短縮、および計算品質の向上にある」(星野氏)。これまでグリッドに懐疑的な企業に対して、既存システムとGrid and Growオファリングを連動させることで、グリッドの意義を知ってもらうことも目的だ。
今回のGrid and Growオファリングでは、ノベルやレッドハット、アルテアエンジニアリング、プラットフォームコンピューティングなどのソフト企業と協業するほか、CRCソリューションズや新日鉄ソリューションズ、住商情報システム、電通国際情報サービス、ニイウスなどのシステムインテグレータ企業とも協業する。これは、グリッド導入後にユーザー企業が、自社のアプリケーションをグリッド対応にするなどの局面に対応することを想定しているためだ。