日立製作所は6月2日、統合システム運用管理製品の最新版「JP1 Version 9」を発表した。6月3日から販売を開始し、7月31日に出荷する。
JP1 Version 9はクラウドコンピューティングの進展を見据えた製品。企業全体レベルのシステム集約化でIT投資を最適化するよう求められていることに着目し、仮想環境のモニタリング機能を強化した。また、ジョブ管理製品を全面刷新しており、「複雑化するシステムでの柔軟な運用」「大規模化するシステムに左右されないスマートな運用」の実現を図っている。
エージェントレスで監視する「JP1/Performance Management - Remote Monitor」
JP1 Version 9では、エージェントを使用せずに監視を可能とする「JP1/Performance Management - Remote Monitor」を新たに製品化した。
さまざまなITリソースを有効活用するためには実際の使用状況を正確に把握することが最も重要になるが、たとえばサーバ集約化のため1台ごとにエージェントソフトをインストールすると、相当の手間と時間がかかってしまう。
そこでエージェント不要の監視システムを採用し、サーバを集約する前後での状況把握や大規模な仮想環境での監視などでも、手間をかけずに全体のリソース状況を把握できる。
物理サーバと仮想マシンの構成情報を自動取得「JP1/Integrated Management」
統合管理製品「JP1/Integrated Management」では、仮想化ソフトウェアから物理サーバと仮想マシンの構成情報を自動的に取得することが可能になった。
業務システムの実行状況や、ネットワーク、サーバ、アプリケーション、仮想環境などで発生するイベントを集中管理し、これらの情報を単一のコンソールに集約、システム全体を一元的に管理する。
また、仮想サーバーの動的な変更に対しても、物理/仮想サーバの構成変更の検知から監視画面への構成情報の反映までをリアルタイムに自動実行する機能の強化を年内に実施する予定だ。
全面刷新「JP1/Automatic Job Management System 3」
ジョブ管理の新製品「JP1/Automatic Job Management System 3」は全面刷新している。
システム管理者の役割に応じた監視画面を用意したことが大きな特徴で、データセンターの管理者はシステム全体のインフラの管理に集中し、各拠点の業務管理者は業務の追加および変更手続きを実行するというように、作業分担に対応した運用ができる。そのため、特定の管理者に業務が集中して、かえって効率が低下してしまうことを防げる。
また、業務の追加変更が発生した場合の切り替え作業を自動化しており、運用中の業務を止めることなく、業務の変更が可能になった。さらに、システム集約化にともなう、高負荷化や業務量の増加と集中に対応できるよう、ジョブスケジュール処理を多重化。ジョブ起動性能は従来比で約10倍に向上している。
さらに、業務終了時刻を予測する機能も備えており、重要度の高い業務を優先的に処理して予定時間内に終了させるために、リソースに余裕のある他のサーバへ業務を移すなどの対処が可能となる。
「運用管理製品の市場を牽引してきた」
日立製作所 情報・通信グループ ソフトウェア事業部長の坂上秀昭氏は、「JP1はフラッグシップであるジョブ管理を中心に、運用管理製品の市場を牽引してきた。国内の経済環境はますます厳しさを増しており、企業はいっそうのコスト削減、効率化を迫られ、サーバー集約、仮想化環境、自動化などを今以上に求められる。JP1 Version 9は、これら全体最適化へのニーズに応えるものと確信している」と述べている。
減速化した経済状況のなか、国内でのIT投資は抑制される傾向にあるが、運用管理製品は「成長率こそ下方修正されているが、今後も拡大が続くと予想されている(IDC Japanなどの予測より)」(日立製作所 情報・通信グループ ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部長 石井武夫氏)ことから、同社ではJP1 Version 9により運用管理製品市場全体の伸びを上回る伸長を見込んでいる。