日立製作所の運用管理ツール「JP1」が誕生したのは1994年。それからちょうど15年を迎えた今年2009年の6月2日、日立はメジャーバージョンアップした「Ver.9」を発表した。
時代を先取りする形で進化を繰り返してきたこのロングセラーソフトは、今回どのような変身を遂げたのか。
仮想化を考慮した運用管理とは
JP1はこのところ、ほぼ3年に1度の割合でメジャーバージョンアップを行ってきた。2003年に発表したVer.7では、当時急速に普及してきたインターネットビジネスやiDCへの対応を打ち出した。そして、2006年のVer.8はITインフラから、より上位のビジネスレベルへフォーカスした。
このように、それぞれ時代の要請にしたがって行ってきたバージョンアップだが、今回のVer.9の特徴を端的に表現すれば「クラウドコンピューティング」への対応ということになる。
日立のソフトウェア事業部 販売推進本部 JP1販売推進センタでセンタ長を務める鎌田義弘氏は、その背景をこう説明する。
「情報システムに対する考え方が、従来の“所有”から“利用”というような形で多様化するとともに、システムが大規模化し、それに連れてますます複雑化しています。そうした状況の中でお客様は、システムを集約して、コストの低減を図ることを相当意識されていると思います」
このシステムの大規模化、複雑化を促進しているテクノロジー的なバックグランドは仮想化だ。仮想化によってシステムのリソースを集約でき、効率的な活用が可能になる。さらにリソースの設置面積も削減でき、消費電力も削減できる。つまり、グリーンITが実現する。
しかし仮想化によってシステムは大規模化、複雑化し、そのシステムの運用管理には新たな問題が浮上していた。
複数の仮想マシンでリソースを共有しても、期待通りの性能がでないということはよくあること。運用管理が十分ではないからだ。さらに、仮想環境では障害発生時の対応が難しい。それに対する運用管理も求められる。
つまり、仮想化が普及すればするほど、それに見合った運用管理が求められるということである。JP1 Ver.9開発の理由は、まさにここにある。