大規模、複雑化するシステムを“Flexible&Smart”に
「そこで私たちは今回、“Flexible&Smart”という切り口でJP1のバージョンアップを進めてきました。大規模、複雑なシステムをいかに柔軟に、そして賢く全体最適化し、効率化するかということが製品開発のポイントになりました」(鎌田氏)
具体的にはどういうことか。
最初のFlexibleとはまず、利用状況に応じて動的に変化するシステムを柔軟に利用するということを意味する。仮想環境では、あるリソースが限界に達すると他のリソースに移行するという動的変化が常に起こる。当然、これに対応できる運用が求められる。
同時にスケーラビリティも必要だ。システムは企業の成長に合わせて大規模化することが多いが、JP1はこのようなシステム全体の大規模化への対応はもっとも得意だという。
鎌田氏は「お客様は資産管理など必要なところから導入したいとか、ジョブ実行など業務そのものの自動的な運用をしていきたいというように、それぞれシステム化には多様な要求があると思います。JP1はそれぞれのコンポーネントを持っていますので、もっともニーズの高いところから導入し、順次適用範囲を拡大する、つまり小規模で始めて大規模なシステムまで対応できるのです」という。それがFlexibleの理由である。
もうひとつのSmartについても、いくつかのポイントがある。まずは「簡単と分かりやすさ」。GUIは当たり前になってきたが、さらにより分かりやすい運用が求められている。そして、2番目は自動化。システムが複雑化すればするほど、属人的な作業を極力排除した運用の自動化が求められる。もうひとつは、Flexibleの要件でもあった小規模スタート。こうした要件を満たすには、Smartさ、つまり賢さが必要不可欠になる。
分かりやすさを実現するモニタリング機能
Flexible&Smartはいわば市場の要請ということだが、今回これをどのようにJP1 Ver.9に盛り込んだのか。鎌田氏はこう説明してくれた。
「製品面ではモニタリングとオートメーションを徹底的に強化しました。モニタリングというのは分かりやすく、簡単にということ。オートメーションは自動の徹底化です」
モニタリングでは、システム監視機能の強化が特筆される。これまでのJP1はイベントを100万件まで格納可能だったが、今回のVer.9ではその10倍、1000万件のイベントまで対応できるようにした。
「仮想化が進展すると、物理サーバと仮想マシンの構成管理が複雑になります。しかし、このモニタリングの強化によってサーバの構成管理や監視ツリー画面の設定が容易になり、運用の負荷が軽減できます。仮想化ソフトのAPIを使って新たに開発した機能で、これによってたとえば業務で何か問題があった場合、その業務がどこの仮想マシン上で稼働しているのかを一目で見ることができるわけです。それもツリー画面だけでなく、お客様の構成要件に合わせたビジュアル監視画面を作ることができますので、より簡単に問題点を把握できます」
これは運用負荷の軽減だけでなく、運用システム構築作業の軽減にもつながるメリットだ。そしてモニタリング強化の2つ目は、ダイナミックに変化するシステムも監視継続できる機能。
従来の監視は、監視対象のエージェントを使うケースが多かった。しかしVer.9ではCPUやOS、ディスクなど主要なコンポーネントはエージェントを入れることなく、監視用エージェントレスで監視が可能となった。
エージェントを入れるためにシステムを停止したり、エージェントを入れることによる不安定要素を気にしたりすることがない。初期導入の場合はエージェントレスで行い、より詳細な情報についてはエージェントを使うという切り分けもできる。