独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は10月1日、The Linux Foundation(LF、関連記事参照)と相互協力協定(Mutual Cooperation Agreement:MCA)を締結したと発表した。
今回の協定は、技術開発の推進、オープンスタンダードの推進、オープンソースソフトウェア(OSS)についての啓蒙、法的課題の研究の分野を対象としたもので、これらについて具体的な協議を推進していく。
LFは、Linuxの普及促進を目的とする非営利組織で、2007年にOpen Source Development Labs(OSDL)とFree Standards Group(FSG)の合併で設立されている。IPAのオープンソースソフトウェア・センター(OSSセンター)のセンター長を務める田代秀一氏によれば、「LFがほかの団体とMCAを結ぶのは今回が初めて」という。
また同日IPAは、OSSを自治体の実務現場に導入する実証実験を開始すると発表した。公募12件から5件を採択している。今回採択されたのは、以下の通り。
- 島根県松江市/テクノプロジェクト
Rubyの普及を目指した自治体基幹業務システム構築 - 宮崎県延岡市/宮崎県ソフトウェアセンター
宮崎県延岡市における入札管理業務のOSS導入実証実験 - 秋田県/イトダコンピュータ
OSS活用による統合運用基盤構築に向けた実証実験 - 静岡済生会総合病院/アイティ・イニシアティブ
病診連携および医療情報標準化の推進を目的としたOSS利用によるASP型電子カルテシステム - 新潟県上越市/BSNアイネット
OSSによる統合データベース(DB)を介した基幹システムと業務システム連携の実証
それぞれの予算は「平均すると5000万円ほど」(田代氏)という。実証実験は2008年2月までの予定となっている。
これまでのOSS導入の実証実験の結果を踏まえて、今回は主に以下の3点の課題に取り組むとしている。
- 人名漢字などを扱うための外字を含む文字コードへの対応、セキュリティの確保、レガシーソフトウェアの代替など、既存システムとの安全な連携・置き換えをOSS活用で実現できるかどうか
- 総務省によって7月から適用開始となった「情報システムに係る政府調達の基本指針」を満たすシステム構築の実践でOSSを活用できるかどうか
- OSSとオープンな標準を活用したシステムへの移行コスト・運用コストを明らかにする
この実証実験は、2005年度、2006年度に続き開催されるもので、OSSを安心して活用できる環境を整備し、OSSの普及促進を図るため、技術開発支援にあわせてOSSの導入実証事業を実施するというもの。2004年度には学校教育現場、2005年度には自治体において、OSSデスクトップの導入実証を実施している。
2006年度には、OSSを活用してオープンな標準による情報システム基盤を構築、自治体に導入し、有効性を検証するとともに、さらなる普及へ向けた課題の抽出を行っている。その結果、住民情報や医療、教育などの重要情報を扱う、自治体という公的組織のIT基盤全体にわたって、一層のOSS活用を達成するためには、さらに課題に取り組む必要があることが判明したという。