オープンソースソフトウェア(OSS)は開発者のみならず、それを利用するユーザーからも協力を得て進化していく。こうした活動はさまざまなところで進められているが、この日本でもOSSは進化し続け、それは必ずしもソフトウェアという形にとどまるわけではない。「OSSメッセージペディア」(mPedia)も、そうしたOSSの一形態と言えるものだ。
mPediaは、OSSが出力するメッセージのオンライン辞典であり、誰でもが辞典作成に参加できる、いわばOSSメッセージのWikipediaといったものだ。現在は、Linuxカーネルの「2.6.9-34.EL」が出力するエラーメッセージだけを対象にしているが、将来的にはカーネル以外のOSSのオンライン辞典の基盤として使われることを想定しており、その目標としては「OSSから出力されるあらゆるメッセージの情報が得られること」を目指している。
mPediaは2007年4月にリリースされているが、日本OSS推進フォーラムサーバ部会では2007年度の活動として、mPediaを広く一般普及させるためという目標のもと、同部会にメッセージDBタスクフォース(メッセージDBTF)を発足。そして、このほどメッセージDBTFの2007年度の活動内容をまとめた報告書が公表されている(PDFファイル形式)。
mPediaはもともと、「障害メッセージマニュアルはミッションクリティカル領域への適用拡大における必須要件」という認識から始められたものだ。そうした目的で始められただけに、実際の利用で役立っているかどうかが問われることになる。こうした問題意識から、メッセージDBTFでは、mPediaの利用状況を分析・調査している。
アクセス数から見ると、リリース直後の2007年4月の月間ページビュー(PV)は3万8924となっているが、直近の2008年1月では12万8773となっている。1年も満たない期間で月間PVは4倍に拡大していることが分かるだろう。
またメッセージDBTFでは、mPediaにあるメッセージが実際に役立っているかどうかを調べる目的でアンケート調査も行っている。このアンケート調査では、登録されているメッセージがユーザーに役立っているかどうかを調べたものだ。
アンケート調査では、mPedia上で知りたいメッセージを検索して役に立ったかどうかを「役立ち率」という形で数値化。2007年7月の第1回では17.7%と低調だったが、2007年10月の第2回では37.6%と2倍に向上し、2008年1月の第3回では48.7%と、回を追うごとに向上していることが分かる。また調査では、検索してヒットしたメッセージの有効性を調べており、第1回では78.0%、第2回では79.3%、第3回では96.7%と、こちらも時間が経つにつれて向上している。
これらの結果を見ると、mPediaが実用に耐えうる、有効なものであることが分かるだろう。ただ、報告書では「(検索)ヒット率/役立ち率が低ければすぐにユーザーから見放されてしまう」とし、「バザールモデル型の発展を期待するための初期値としてはヒット率/役立ち率を80%程度にまで引き上げたい」と、今後の課題であることを明らかにしている。