また、ミドルウェアも物理的な資源ではないが、アプリケーションとデータを分割して、アプリケーションからデータへの柔軟な接続性を提供する意味において、仮想化的メカニズムであると考えることもできる。
ミドルウェアでの仮想化はSOA(サービス指向アーキテクチャ)をもとに、Webサービスによって、SOAPやXMLを利用することにより、アプリケーションからのネットワークやデータに対する仮想的なアクセスを提供している。
また最近では、BPELよってアプリケーションの仮想化を提供しているとも言える。もちろんウェブアプリケーションもウェブブラウザがあればクライアントがWindowsであれ、Linuxであれ、または携帯端末であれ動作するので、クライアントの物理特性を意識させないということではアプリケーションの仮想化といえる。
最近になって、その有用性に対する検討の気運が高まってきたのが、デスクトップアプリケーションやデスクトップの仮想化である。
これらはアプリケーションストリーミングやサーバベースコンピューティングと言われている。デスクトップの仮想化の主な目的は、クライアントの運用管理性の向上とセキュリティの向上である。しかしデスクトップの仮想化はまだ新しい分野であるので、さまざまなデメリットも存在する(図5)。
| メリット |
|---|
| ・サポートコストの削減:従来は複数のデスクトップ構成に対してアプリケーションをテストしなければならなかった。仮想化技術を適用すれば、IT部門は導入に先駆けてひとつの環境に対してテストを行うだけでよく、その後のサポートの手間も大幅に軽減できる。 |
| ・アプリケーションとデータのセキュリティ向上:仮想化環境では、システム/アプリケーションのプロビジョニングおよびこれらへのアクセスに対する管理をIT部門が強化できるので、アクセス権限はもとより、データに対してもセキュリティの確保がより簡単になる。 |
| ・ソフトウェア・ライセンス管理の質的向上:あらゆるアプリケーションをひとつの仮想化環境経由で配備することにより、ソフトウェアの使用状況およびライセンスの追跡が容易になる。仮想化製品の多くは、ソフトウェア追跡機能およびライセンス管理機能を備えている。 |
| ・システムの安定性と信頼性の向上:仮想環境では、アプリケーションの競合を防ぎやすく、問題発生箇所の修復もより容易である。また、仮想化イメージの再配備によって、障害からの復旧もしやすい。 |
| デメリット |
| ・障害時の問題解決の複雑さ:仮想化製品は、さまざまな技術を駆使してホストOSと接続することで、ユーザから見て通常のデスクトップと変わらない環境を実現している。そのため、ホストOSよりも複雑な仕組みで動作しており、アプリケーションやシステムのクラッシュ時に診断が難しい問題が発生する恐れがある。 |
| ・アプリケーションとOSの互換性:アプリケーション仮想化では、アプリケーションのパッケージ化あるいは再構成が必要であるが、仮想化環境では機能しないアプリケーションもある。また、仮想化技術をサポートするOSは少なく、古いOSも混在している企業では、すべての環境に仮想化を適用できないこともある。 |
| ・ソフトウェアのライセンス問題:サーバソフトウェアのライセンス料はプロセッサの数を基に算出するケースが多いが、デスクトップソフトウェアのライセンス料はユーザ単位で算出されることが多い。OSまたはアプリケーションの複数のインスタンスを1台のサーバ上で稼働させるCitrix社やSoftricity社の製品を利用する場合には通常問題は生じない。しかし、ブレードPC、VMware ACE、Ardence社の製品などを使用して完全なデスクトップイメージを動的に配備する場合には、それぞれのライセンスを正しく管理するために正確な追跡機能が必要となる。 |
最後にサービスの仮想化であるが、これはSaaSによってユーザーは多くの物理資源を社外のサービス提供者から得る方式である。ユーザーはサーバやストレージ、データベースやアプリケーションを保有していなくとも、ネットワークに接続できるクライアントのみでアプリケーションを利用することができる。
仮想化に対する提言
ストレージの仮想化やサーバの仮想化などは、既に実用期に入っており、北米では約6割の企業がサーバの仮想化を導入していると言われている。
今回、説明した各ITスタックの仮想化には厳密に言えば仮想化でないと言えるものも含まれている。しかし、ユーザーや開発者をさまざまなリソースの制限から開放する意味で仮想化という表現を用いてみた。
ITはビジネスを実行するための道具である以上、利用者によってより柔軟で利用しやすいものとならなければならない。仮想化はそのための有効な手段であると考え、ユーザーは仮想化のデメリットとメリットを十分に考慮した上で、積極的に採用を検討するべきである。
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