シトリックス・システムズ・ジャパンは11月9日、都内ホテルにおいて「Citrix iForum 2006 Japan」を開催した。基調講演には、Citrix Systemsの社長兼CEO(最高経営責任者)、Mark B. Templeton氏が登場。「ビジネスの変革を促すIT戦略。セキュア&アドバンスド アクセス」をテーマに同社が推進する「アプリケーションデリバリインフラストラクチャ」について紹介した。
「電力会社があるとしよう。電力を作る部分と、電力をデリバリする部分、どちらかしか持てないとしたらどちらを持つか。私は、迷わず電力をデリバリする部分を持つ。多くの企業は、アプリケーションを動かすことに注力し、いかにアプリケーションを利用者にデリバリするかは考えていない」とTempleton氏。
そこで、アプリケーションをデリバリするためのインフラを提供する、というのがシトリックスの戦略となる。Templeton氏は、「いつでも、どこでも、どんなアプリケーションでも利用可能にし、仕事ができる環境を提供するのがアプリケーションデリバリインフラストラクチャだ」と言う。
今後さらにビジネスや市場の変化が加速し、その変化に対応するために、いつでも、どこでも自由に安全に仕事ができる環境が必要になるという。この変化の激しい世界を「ダイナミックワールド」と呼び、ダイナミックワールドにおいて企業が着実に成長するためには、アプリケーションデリバリインフラストラクチャの構築が必要になるというのがシトリックスの主張だ。
このダイナミックワールドを動かしていく要因は次の5つ。
- グローバリゼーション(Globalization):ビジネスのグローバル化は止められない流れ。柔軟に対応できなければ競争に勝てない。
- 分断の危機(Disruption):テロや災害などがあってもビジネスを継続できることが重要。
- 統合(Consolidation):企業の買収や合併統合は今後も加速。迅速な対応が不可欠になる。
- 規制(Regulation):情報に関する法令遵守や規制がより一層求められる。
- エコー世代(Echo Generation):16歳〜27歳の常に主導権を持ち管理したいと考える新しい世代が台頭する。
Templeton氏は、「ダイナミックワールドを動かす要因に、柔軟かつ迅速に対応できるIT環境を実現することが重要であり、そのための仕組みがアプリケーションデリバリインフラストラクチャだ」と話している。
それでは、このアプリケーションデリバリインフラストラクチャをいかに実現すればよいのか? シトリックスでは、次の3つのコンポーネントにより、アプリケーションデリバリインフラストラクチャを実現する。
- アプリケーションデリバリ:アプリケーションの仮想化、デリバリの最適化、デスクトップへのストリーミングの技術で構成。
- アプリケーションセキュリティ:アプリケーションや情報の保護と管理を行う技術で構成。
- アプリケーションビジビリティ:アプリケーションのパフォーマンスの測定と監視を行う技術で構成。
具体的な製品群としては、アプリケーションデリバリでは「Citrix Presentation Server」「CitrixNetScaler」「Citrix WANScaler」「Tarpon」など、アプリケーションセキュリティでは「Citrix Application Firewall」「Citrix Access Gateway」「Citrix Password Manager」などを、アプリケーションビジビリティでは「Citrix EdgeSight」などを提供する。
Templeton氏は、「アプリケーションデリバリインフラストラクチャを実現するために必要なパーツ、中核となるテクノロジはすでにそろっている。今後も3つの分野に必要な投資を行っていき、技術革新を加速していきたい。特に、アプリケーションビジビリティの分野において分析能力やエンド・ツー・エンドの管理機能の実現で新しい取り組みを推進していきたい」と話す。
シトリックスの代表取締役社長、大古俊輔氏は、「IT分野において分散化と集中化は、昔も、今も変わらない課題。今後も分散化は加速し、それをいかに集中管理するかが重要になる。特に、分散した情報を必要なときに、必要な人に新鮮な状態で提供するための仕組みが必要であり、だからこそBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)やSaaSがアプリケーションデリバリのひとつの方向性として注目されている。我々は、この分野で今後もイノベーションを続けていく」と話している。