専業で培ったデータ品質の確保と利用ノウハウがBOの武器--加速するBI(2)

柴田克己(編集部)

2007-10-28 17:00

 BI分野に関連した最近の大きなニュースとして、10月に発表されたSAPによるBusiness Objects(BO)の買収表明がある。今後の両社の具体的な動きについては、まだ明らかにされていないが、専業のBIベンダーとして20年弱に渡ってこの分野に取り組んできたBOと、ERPアプリケーションベンダーから情報系システム分野への動きを加速させているSAPの更なる融合に向けた動きは、BI市場の今後の状況を予見させるものとして注目を集めている。

 BOは、フランスで1990年に設立された。2003年には、米Crysatl Decisionsを買収し、フランス、米国の2本社体制でビジネスを展開。データ統合、データクレンジング、評価といった情報系のプラットフォーム製品をベースに、レポート、クエリ、多次元分析、ビジュアライズといった、包括的なBIソリューションを提供してきた。世界80カ国に44000社、日本でも3500社以上の導入実績を誇るBI分野でのオーソリティの1社である。

 2007年6月には、財務管理およびパフォーマンスソフトウェア分野のCartesisを買収し、EPM(Enterprise Performance Management」:企業業績管理)分野への本格進出を果たした。

 日本においては、1996年2月に日本支社を設立。2000年9月に日本法人化を行った。この10月には、カルテシス・ジャパンを統合してEPM関連製品群のラインアップを拡充。EPM事業部を設立し、事業部長にはカルテシス・ジャパンの代表取締役であった中西正氏が就任した。今後、日本でも、より一層EPM分野の進出を強めるという。

「End to End BI」にこそ価値

 日本ビジネスオブジェクツ、マーケティング部プロダクトスペシャリストのInderdip S, Khorana氏は、BOにおけるBIのコンセプトを「End to End BI」という言葉で表現する。

 ここで言う「End to End」とは、各業務用件別に構築されたシステムに散在するデータから、品質の高いDWH(データウェアハウス)を構築し、それを、データの利用用途ごとに最もふさわしい形で出力する最終工程までをカバーするソリューションを、一貫したプラットフォームの上で提供していくという意味だ。

 BOでは、自社の提供する多彩な製品ラインアップを主に「EIM(Enterprise Information Management)」、「IDD(Information Discovery and Delivery)」、「EPM(Enterprise Performance Management)」という3つのカテゴリで整理している。

 「EIM」と呼ばれるのは、データ統合のための「Data Integrator XI」、データクレンジングのための「Data Quality XI」、データ評価のための「Data Insight XI」といった製品群。各種の業務システムなどから吐き出されるデータから品質の高いDWHを構築するための一連のツールになる。

 また、最終的なプレゼンテーションの根拠となっているデータの出自をトレース可能とし、データと結果の信頼性を確保するための「Metadata Manager」といった製品もこのカテゴリに含まれる。いわゆる、従来からETL(Extract、Tranceform、Load)などと呼ばれている、BIツールの基礎となる部分を表すカテゴリだが、Metadata Managerといった製品は、「特にSOX法やITガバナンスのニーズが高まっている中で注目を集めた」(日本BO、マーケティング部ディレクターの山本哲也氏)という。

 「IDD」と呼ばれるのは、レポート、クエリ、分析、ダッシュボード、視覚化といった形で、DWH内のデータをさまざまなニーズに合わせた形でプレゼンテーションするためのツール群である、レポーティングツールの定番でもある「Crystal Reports」を始め、Excelをフロントエンドとして、よりエンドユーザーに近い社員にBIの恩恵を与える「Crystal Xcelsius」といった製品も、このカテゴリに含まれる。

 一方の「EPM」は、DWH内のデータを、企業のCFOをはじめとするマネジメントチーム向けの指標として活用するためのもので、現在BOが製品ポートフォリオの拡充と、販売強化に注力しているカテゴリでもある。予算編成やシミュレーションなどのプランニング、連結処理支援、そして、コンプライアンスなどとも絡んだ財政ガバナンスといった仕組みを実現するためのものだ。

 BOでは、2005年に発表した「BusinessObjects XI」以降、これらEPM、BI(IDD)、EIMの各ソリューションを、SOAベースの単一プラットフォームで提供するというビジョンを推進している。Khorana氏は、「BOでは、この3つの層がすべてそろってこそ価値があるBIと呼べると考えている」という。

 業務システムのはき出すトランザクションデータ、一般社員や部署単位で頻繁に更新が行われるスプレッドシートなど、あらゆるフォーマットで企業内に散在する「データ」を包括的に管理し、品質とトレーサビリティを確保することで情報の再利用を高める。そのための仕組みを、一貫したアーキテクチャで提供できる点が、BOの最大の強みというわけである。

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