この連載では、金融商品取引法(日本版SOX法)などの施行対象の会社と取引のある中小零細企業が、今までに投資してきたIT資産を使い、カネ、ヒト、時間をかけずにIT内部統制の自主基準を推進することを目指す。
IT内部統制では一体ナニをすればよいのか?
そうはいっても、IT内部統制では、一体どのようなことを実際に行えばよいのだろうか。
内部統制とITとの関係は、それぞれに独立したものではない。そのため、図1のように、内部統制の5つの基本的要素とひとまとめで評価することになる。
では、これらの5つの基本要素についてひとつずつ見ていこう。
統制環境
ここでは、会社のITに関する基本方針の作成と明示が求められる。
「IT利用とIT統制のための基本方針の明示は、経営者の理念を伝えるものであり、経営者がおこなう。情報責任を担当する取締役がいれば、この方針に従って統制活動を整備する」(システム管理基準 追補版より)
極端な話であるが、コンピュータを使った業務を一切行わない会社であれば、「わが社はITによる統制を行わない」という基本方針も選択できる。 その場合でも、内部統制が必須である以上、手作業で可能な統制環境を整える必要はある。
話をIT内部統制に戻そう。 IT内部統制は人にかかわるものなので、経営者による社員への方針の教育が必要だ。
こんな例がある。
個人情報保護法が施行された際に、社内にある各パソコン(PC)のフロッピーディスク(FD)の差込口に「使用禁止」ラベルを張った。FDが使えるPCを限定することで情報の漏えいを防ごうという意図だったのだが、そのことは社員に対してきちんとした説明が行われていなかった。さらに、社員がFDの使えるPCを利用する際には、自分の名前をノートに書くという手続きが必要だった。これが面倒だということで、社員には大変評判が悪かった。
その後どうなったか。従業員の多くは、どうしてもFDを使いたいときに、自分のPCに張られた使用禁止ラベルを、破らないように丁寧にはがしてFDを使うというのが定例となってしまったという。
この例のように、方針教育が事前にきちんと行われていないと「ホントはいけないんだけれどね……」といった例外が横行してしまう。
先の例では、「万が一、情報漏えいで問題が発生した場合に、会社が、あなた(従業員)を守るためにラベルが貼ってあるのだ」ということを教育し、理解を得ておけばよかったはずである。
なお、統制環境は、IT内部統制のすべてにかかわってくる要素である。そのため、今回の連載で紹介するWindows Serverの機能のすべてに関係してくる。前回紹介した連載の構成と紹介する機能についても、改めて確認しておいてほしい。
第1章 | IT内部統制の基本要素を理解する |
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第2章 | ユーザーIDの集中管理 【Active Directory】 |
第3章 | 誰がファイルを読み書きできるのか【アクセス許可(共有フォルダ、NTFS)】 |
第4章 | PCの集中管理【グループポリシー】 |
第5章 | 社内のPCを守るために【セキュリティの維持に必要な機能】 |
第6章 | 監査のために【監査機能】 |
第7章 | リスク対策のために【バックアップ機能、ボリューム・シャドウ・コピー】 |
第8章 | 既存のPCをActive Directoryに登録する |