前回は「コンロ1台、鍋3つ、炊飯器なし」という厳しい状況で、休日の夜に美味い晩飯を食うべく、調理の工程を図にして作業の流れを考えることを試みた。……結果的にできあがった晩飯はマズかったのだが。
失敗は、おかずの調理が完了した時点で、ごはんの出来上がりから25分も経過し、すっかり冷めてしまったことだ。問題は「出来上がったご飯を鍋で温め直すことはできない」ことを失念していた点にある。いや、確かに鍋で湯を沸かし、ラップで包んたごはんをビニール袋に入れて、湯で温め直せばホカホカにはなる。しかし、今回は敢えてこの手段はとらずに、すべてのメニューが出来たてホカホカに近い状態になるようにしてみたい。そのためにはどうすればいいか? 少しずつ問題を解決していこう。
晩飯づくりの本質を考えてみよう
そもそも、晩飯づくりで私は何をやっていたのか。
私はごはんを炊いたり、肉を炒めたり、大根を煮たりしているが、結局のところ、鍋という道具に入っている食材を、コンロというたった1つの道具から出る炎で、加熱していたのである。つまり「材料」を「加熱」することが、前回の「調理」のキモということになる。
材料は、水と米、だし汁と肉や野菜、水と味噌や大根だった。だし汁も、水と昆布やカツオ節でできているから、「水と何か」の組み合わせだ。ということは、私は「水と何かを加熱して、美味しい状態にすること」を目指したわけだ。
つまり、何かを温めて美味しい状態にするのが、前回の調理の本質的なところだ。たまたまコンロが1つしかなかったために苦労してしまったが、本来なら加熱できればよく、ガスコンロでも、電気コンロでも、焚き火でもよいのだ。鍋も、鉄鍋でも土鍋でもホーロー鍋でも構わない。炊飯器があればもっと楽だったはずだ。食材だって魚介類でも山菜でもいいし、カレー粉やコンソメを加えることもできた。最終的に美味しい晩飯が食えれば、今回の目標は達成されるのである。
全体を見て加熱する順番を考える
さて、そろそろカイゼンに取りかかることにしよう。まずは、前回の全体の工程をもう一度見てみよう。3品の調理は、ほとんど重なることなく、シリアルに行われているのが分かる。
前回の調理における一番の制約は、コンロが1つしかないこと。加熱することが本質的なところであるから、コンロをどう使うかがキーポイントとなる。工程図ではコンロを使っている工程を赤く色づけした。それぞれの調理の手順を踏まえて、コンロを上手く使い回し、料理が出来上がる時間差をできるだけ小さくしたいと思う。