日本オラクルのプライベートイベント「Oracle OpenWorld Tokyo 2009」(OOW Tokyo)3日目のセッションには、「NTTドコモの情報システム戦略―リアルタイム・マネジメントへのあくなき挑戦」というタイトルでNTTドコモの執行役員情報システム部長の西川清二氏が登壇した。同社はいわずと知れた国内最大の携帯電話会社だが、サーバ約1600台、ディスク容量約5000テラバイトという大規模システムを動かすデータベース管理システム(DBMS)はほぼOracleで統一されている。
そのためか今回のイベントでも注目の的で、会場は1000人を超える入場者で超満員の盛況となった。「業務とデータフローを一致させたシステム上で現実の経営の姿が即時に把握できる」という同社のリアルタイムマネジメントシステムは現在も刷新を重ね、同社の情報戦略を推進する核となっている。
経営の実態をリアルタイムに把握
NTTドコモの契約者数は、2008年末現在で5400万を超えるという。従業員約2万2600人、営業利益4兆7000億円(2008年3月期)という国内最大の携帯電話会社だ。2008年秋に発表した中期ビジョン「新たな成長を目指したドコモの改革とチャレンジ」のもと、経営課題としてドコモグループ28社のリアルタイムな経営情報把握を掲げている。
スピーカーとして壇上に立った西川氏はまず「この仕事を担当して15年になりますが振り返ってみると、この演題にあるようにリアルタイムマネジメントに対して飽くなき挑戦を続けてきたことになります」と語り、同社が取り組むリアルタイムマネジメント、つまりは“経営の見える化”をテーマに講演に入った。
それでは、ドコモの経営情報とは何か。西川氏によると、4つあるという。(1)契約や販売、在庫などの“オペレーション指標”、(2)顧客の声やエリア状況、品質状況、故障状況などの“顧客満足度(CS)情報”、(3)“利益”(営業利益と営業外収益)、(4)“費用”(営業費用と営業外費用)――の4つだ。これら4つの経営情報をどのようにすればリアルタイムに把握できるかというのが最大の課題ということになる。
西川氏は、同社のリアルタイムマネジメントを、1997年から稼働している顧客管理システム「ALADIN」をもとに説明し始めた。「お客様がドコモショップに来店された場合、店員がお客様のご要望をお伺いし、来店されている間に契約に関するすべてのことを解決します」としてドコモショップでリアルタイムで処理されるのは、顧客情報、与信チェック、電話番号選択、在庫引き落とし、販売数カウントアップ、売上計上、代理店精算といった契約と販売に関するあらゆる項目になる。
「データの発生元であるドコモショップの店員が、自らの責任によってデータ投入を行い、それを即時処理するという業務運営形態を取っています。これによって当社は、全国のどこで何がいくつ売れたかをリアルタイムで正確に把握することができるのです」
ALADINによって、業務の流れとデータの流れ、カネの流れとデータの流れ、モノの流れとデータの流れを一致させ、システムを見ているだけで現実の経営の姿がリアルタイムに把握できるということになる。西川氏は「われわれはこのような環境をリアルタイムマネジメントと呼んでいます」と述べた。
世界初のリアルタイム課金
次に説明したのは、携帯電話の課金の流れだ。
あるユーザーがドコモの携帯電話を使うと、その度ごとにドコモの移動通信網で通信明細データ(CDR)が「MoBills(モビルス)」という料金システムに送られる。その数は1日で10億を超えるが、そのCDRをもとに通信料や割引額、それらから出される請求額などをリアルタイムに計算してから、利用案内・通知のフェーズに送られるという。