先頃開催されたOracle OpenWorld Tokyoでは、SOA(Service Oriented Architecture)の導入とその運用についての先進的な取り組みが数多く紹介された。
本稿ではSOAに関するセッションのひとつ「SOAによってもたらされた価値と、失敗しない導入術」を紹介する。パネルディスカッション形式で進められた本セッションでは、出光興産 情報システム部 企画課 澤井隆慶氏と、NTTドコモ サービスプラットフォーム部 サービスプラットフォーム開発企画担当 担当課長 斎藤剛氏が現況と今後について論議し、日本オラクル セールスコンサルティング統括本部 - SOAアーキテクト本部担当ディレクターの岡嵜禎氏がモデレータを務めた。
混在モデルを意識したアーキテクチャ整備:出光興産
出光興産とNTTドコモではSOA導入以前さまざま課題を抱えていた。
出光興産ではシステムの追加修正を長年続けた結果、プログラム自体が複雑化するとともにメインフレームとオープンシステムの混在環境の下、システム連携数が増加。システム全体が複雑化、いわゆるブラックボックス化してしまった。さらに、インターフェースの調整に平均で2〜3カ月もかかるようになってしまった。
そこで同社ではこのような混在モデルを意識し、ビジネス上の重要度を勘案したアーキテクチャ整備に着手した。競争力を強化しなければならない領域では独自色を盛り込み、J2EEを軸とする手組みシステムを用いた。標準化を推進し、法規制に配慮すべき領域にはパッケージを適用した。そして、今後変化が少ないと考えられる領域ではメインフレームを維持した。
これらが功を奏し「インターフェース数は30%、開発コストは50%以上削減することができた」(澤井氏)
再利用可能な部分を把握するために設計モデルを可視化:NTTドコモ
NTTドコモはビジネスモデルに応じて個別最適化されたシステム群で開発を進行させてきたところ、システムごとの実装について横通しの判断が困難になるだけでなく、一極集中化した対応が加速した。また、事業部サイドからの開発についての要望が急増したため、これらに応えていった結果、やはり同社でもシステムのブラックボックス化が進んだ。
これを打開するため、携帯電話向けサービスを構成している機能を共通化し、再利用可能なサービスコンポーネントを整えた。また、各サービスを立ち上げるたびごとに社内システムとの連携が必要になるため、その手続きの標準化と生産性向上を目指して連携の基盤を構築した。さらに、再利用可能な部分を把握できるように設計モデルを可視化した。
この結果「3度目のサービス開発で、通常の開発モデルと比べてコストが削減できることを実証できた」(斎藤氏)という。