「Windows 10」は2025年10月14日にサポートが終了する。所有している古いPCの中には、「Windows 11」へアップグレードできないものもあるだろう。その場合の対応が課題となる。
もちろん、Windows 11搭載の新しいPCを購入する方法もあるが、関税の影響でPC価格の上昇も予想される。またその場合、まだ動作はするものの、間もなく安全に使えなくなるWindows 10マシンが残ることになる。あるいは、単純に新しいPCを購入する予算がないケースもあるだろう。
いずれの場合も、古いPCにGoogleの「ChromeOS Flex」を導入することが有効な選択肢となり得る。
ChromeOS Flexとは何か
ChromeOS Flexは、WindowsやMacを搭載した既存のマシンに導入し、その寿命を延ばすために設計されたOSである。高速かつ安全で管理しやすく、無料で利用できるクラウド中心の代替OSとして提供されている。「ChromeOS」のオープンソース版である「Chromium OS」をベースとしており、「Chromebook」が持つ機能や利点の多くを、より広範なハードウェアで利用可能にする。ウェブブラウザーが使えれば、ChromeOS Flexも問題なく利用できる。操作は非常に簡単である。
ChromeOS Flexでできないことは、スタンドアロンのWindowsアプリケーションの実行である。ただし、「Microsoft 365」をはじめとするMicrosoftのSaaSアプリケーションは利用可能だ。Microsoftのウェブポータルにログインすれば、他のOSと同様にこれらのアプリケーションを使用できる。通常通り、「Microsoft OneDrive」に保存したファイルも利用できる。
そのため、Windows中心のビジネス環境でもChromeOS Flexの利用は可能である。シングルサインオン(SSO)に対応しており、「Microsoft Entra ID(旧Azure AD)」との統合も実現されている。これにより、ユーザーは一度のログインでMicrosoft 365のウェブアプリへシームレスにアクセス可能となる。IT管理者は、Googleの管理コンソールを通じて、ユーザー向けにMicrosoft 365ウェブアプリの事前設定やピン留め、ファイル関連付けの管理、クラウドストレージポリシーの適用などを行うこともできる。つまり、ChromeOS Flexは企業・個人双方の用途に適したOSといえる。
ChromeOS Flexを検討する理由
まず、セキュリティの高さが挙げられる。自動更新、データ暗号化、サンドボックス機能により、マルウェアやオンラインの脅威から保護される。これまでChromeOS Flexを標的としたランサムウェア攻撃は確認されていない。また、従来のウイルス対策ソフトも不要である。
次に、動作の高速性も特徴である。マシンの老朽化やWindows環境の複雑化で動作が遅くなったPCでも、軽快に動作する。OS自体が軽量で速度重視の設計のため、起動時間は最短6秒と高速で、長期間使用しても速度低下が起こりにくい。Windows 10の動作が重く、Windows 11を実行できないような古いハードウェアに、新たな活用法をもたらすだろう。
例えば、筆者が所有していた古いPCの一つに、「Dell Inspiron One 2320」がある。2.4GHzの「Intel Core i5」プロセッサー、6GBのRAM、「NVIDIA GeForce GT525M」、320GBのHDDを搭載したこの一体型PCは、2012年当時は高性能だったが、13年が経過した現在ではそうとは言えない
しかし、もともと「Windows 7」が入っていたこのマシンには、まだ使える23インチHDディスプレーが搭載されている。問題はWindows 10を快適に動作させられず、Windows 11の実行は論外である点だ。「Linux」をインストールする選択肢もあったが、筆者は既に複数のLinux PCを所有していたため、別のOSを試すことにし、ChromeOS Flexをインストールすることにした。
このWindows 7 PCは、専用の会計システムとして使われていた。しかし、サポートの終了したWindows 7をインターネットに接続して使うのはセキュリティリスクが高いため、ネットからは切断していた。これは、間もなくサポートが終了する多くのWindows 10 PCにも当てはまる状況だろう。多くの古いWindows PCと同様、このマシンも動作が極端に遅く、起動だけで3分近くかかっていた。
ChromeOS Flexのシステム要件
ChromeOS FlexはLinuxベースであり、低スペックのコンピューターでも動作可能である。Linuxベースではあるが、専門知識は不要である。システム内部に触れる機会はほとんどないため、一般ユーザーがLinuxを意識する必要はない。必要な処理能力は非常に低い。Googleによると、ChromeOS Flexの最小システム要件は次の通りである。
- IntelまたはAMD x86-64ビット互換デバイス(32ビットプロセッサーでは動作しない)
- RAM:4GB
- 内部ストレージ:16GB
- USBドライブから起動可能
- BIOS:完全な管理者アクセス(問題発生時は、ChromeOS Flex USBインストーラーから起動し、BIOSで調整が必要な場合がある)
要するに、2010年以降に製造されたPCであれば、多くの場合動作すると考えられる。試してみれば、さらに古いPCでも動作する可能性はある。ただし、「Intel GMA」シリーズの 「500」「600」「3600」「3650」を搭載するマシンでは問題が発生する可能性がある。
手持ちの古いPCで動作するか確認したい場合は、ChromeOS Flexの認定モデルリストを参照するといいだろう。筆者のInspiron One 2320はこのリストには掲載されていなかったが、自己責任で試すことにした。