前回(「今日を見て明日を決める時代」の要請に応えるBIツールのトレンド)は、BIの最新動向についてアナリストに意見を聞き、いま成功している企業の多くがデータ分析と意思決定のスピードを重要視していることを知った。今回からは、データ活用の道具としてのBIツールについて、具体的に見ていくことにしよう。
この特集「BIによるデータ活用ことはじめ」をこれまで読んできた人であれば、ビジネスにおいてデータを分析することの重要性は十分に理解していることだろう。そこで今回は、ビジネスデータ分析の初歩の初歩をかじってみることにしよう。
表組みの「決算書」から経営状態を分析
インターネットは、データの宝庫だ。私たちはインターネットにアクセスして、いつでも分析可能なデータを入手することができる。上場企業が公開している「財務諸表」、いわゆる「決算書」もそうした有用かつ無料のデータのひとつである。決算書は経営状態を見るための道具であり、そこに表された数字を分析することで、さまざまな「インテリジェンス」を得ることができる。
さて今回、ある企業が公開している3期分の財務諸表のデータを抜粋し、下図のような表にしてみた。
上にある「貸借対照表」は、その企業の期末ごとの財政状況を示したものだ。決算書を読むことはビジネスパーソンとして重要なことだと思うので、それぞれの用語についても簡単に説明しておこう。
「資産の部」は、資本の運用形態(何にいくら使ったか)を示している。そのうちの「流動資産」とは現金を含めて1年以内に現金化できる資産のことだ。この表は明細を省いているが、実際には現金がいくら、売掛金がいくらと、細かく示されている。これに対し「固定資産」は、土地建物や長期性預金、投資有価証券など、長期間保有する資産が示される。
一方、「負債の部」と「純資産の部」は2つで1組になる。これらは資本の源泉(どこからいくら調達したか)を示している。「負債の部」は、銀行など他人から借り入れて調達した資金(負債)が示される。これに対して「純資産の部」は、自ら株式を発行して調達した資金や資本金、利益余剰金などの自己資金が示される。結果として、調達した資金(負債及び純資産合計)と、使った資金(資産合計)はぴったり一致する。
「損益決算書」は、その期にどれだけ利益を上げたかを示すツールだ。まず売上高から売上原価を差し引いた金額が「売上総利益」だ。これは「粗利益」とも呼ばれる。次に、そこから人件費や広告宣伝費などの「販売費及び一般管理費」を差し引いた金額が「営業利益」。そこから本業以外で出た収益や損を加減した金額が「経常利益」となる。
さらに、そこから固定資産の売却等で出た収益や損(特別利益、特別損失)を加減した金額が「税金等調整前当期純利益」。そこから国税(法人税)や地方税(住民税)を差し引いた金額が「当期純利益」となる。このように、費用や損失、税金などを、順番に差し引いていくことで、その期の純利益が算出される。
それぞれの意味するところが分かったら、いよいよデータを見てみよう。