日本においても、受託開発からパッケージソフトウェアによる高収益化を狙うという動きは見られるし、最近はそれをSaaSとして提供するということがトレンドである。つまり、パッケージソフトウェアの開発・販売というのは、インドのみならず、単価の呪縛から逃れようとする際のひとつの有力な手段として認識されている。
パッケージビジネスの悲惨
それでは、同じく日銀の「企業向けサービス価格指数」から「パッケージソフトウェア」を見てみよう。
驚いたことに、受託開発以上に目も当てられない状況である。受託開発との対比で言えば、2001年にはすでに大きく下落していることから、ITバブルの崩壊という景況感の悪化に極めて敏感に反応していることが良く判る。また、景気の改善が必ずしも単価の上昇には結びつかず、むしろ一度下がったら二度と元には戻らないのがパッケージソフトウェアだと言える。
パッケージソフトウェアは複製コストが実質ゼロであるが故に、売れれば莫大な収益をもたらす一方、一旦開発原価を償却してしまうと不況期の価格下落が止まらなくなる。さらに、開発原価をより薄く広く回収することを前提としたSaaSモデルは、投資原価を初期購入時に回収しようとするパッケージソフトウェアへの価格下落圧力となり、今後もこの傾向は続くと考えられる。
答えはあるか
こうして見ると、受託開発単価から逃れるために、安易にパッケージビジネスへ走ったり、あるいはその新しいデリバリーモデルであるSaaS型ビジネスへ走ることが解決策につながらないことが判る。受託開発は、単価変動に晒されながらも初期投資が少ないことから、ローリスク・ローリターンであるのに対し、パッケージビジネスは初期開発コストを伴うだけにハイリスク・ハイリターンのビジネスとなる。とは言え、単価ビジネスがよりスケール・プレーヤーへ有利に働くことが明らかである以上、そこに留まっていることは解決にはならない。
まずは、受託開発とパッケージビジネスでは、ビジネスモデルが全く異なることを押える必要がある。ゆえに、ビジネスモデルがそれぞれに持つ特徴を押えたうえで、そのビジネスモデルを実現するのに必要なリソースとリスク管理能力を獲得するプロセスを地道に踏んでいくことが必要だろう。「受託開発は儲からないからパッケージソフトウェア」であるとか、「ライセンスは売れないからSaaS」へというように、ビジネスモデルの転換は単に方針転換の掛け声だけでは決して実現しないことは間違いない。
筆者紹介
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。92年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
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