当社のビジネス範囲は大企業、中堅・中小企業、そして官公庁がメインになりますが、全体を俯瞰すると、「情報サービス産業に対する投資は変わっていない」といえます。
ITバブル崩壊後、一時IT投資は抑制されましたが、2003年あたりから徐々に回復しています。そしてその上昇カーブはいったん上がって、横ばいになっているという状態です。というのは、かつてITバブルのころは、事業のための先行投資が主眼であり、まず通信環境の整備やサーバの導入を始めていたわけです。ところがバブルが崩壊して、システムの集約・閉鎖により、一時投資額が減った。これは米国ではさらに顕著です。
それから徐々に盛り返してきたわけですが、ベンダー側から見ると、プロジェクト数も導入サーバ数も工数も増えているのですが、金額には大幅な増減はありません。それは、EA(Enterprise Architecture)の観点から、ユーザー企業側がIT戦略の最適化を図るために調達のしぼり込みに入ったからです。加えて、製品単価や人月工数も下がっています。ご存じのとおり、中国やインドの技術者に開発を任せることでコストを抑えるオフショア開発も一般的になっています。つまり、かつてはベンダー設定価格が主導権を持っていたのですが、その主導権がはっきりとユーザー企業側に移行している。これが起こったのが2000年くらいで、徐々にその波が顕著になっています。
IT投資がようやく通常の「設備投資」と捉えられ始めた
逆にユーザー企業側からすると、ようやくITも通常の設備投資と同じレベルになったということです。ITだから特別扱いするのではなく、一般の工場や設備投資と変わらず、少しでも経営に有利なものを最適なコストで構築する。当たり前のことなのですが、いままではそれができていませんでした。ベンダー側からすると、同じ設備を入れて、はっきりと「経営上これだけのメリットがある」と納得してもらえれば、「コストをかける価値がある」と判断してもらえるわけです。
国内企業の場合、8割のコストが運用・メンテナンスに回り、残り2割で新規投資を行っているといわれています。ということは、ベンダー側はこの運用・メンテナンス費をできるだけ下げ、新規設備として魅力的な、経営にインパクトを与えるソリューションを提供していくことが使命になります。日本オラクルの戦略も、こうした考えに基づいています。
「ITが経営にもたらすインパクト」を評価する時代に
まずアプリケーション部分から説明しましょう。国内企業の中には、すでにERPを導入しているところもあるし、メインフレームやオフコンを使っているところもあります。その中にはグローバル展開を視野に入れている企業もあります。
これらの企業にとって、「最新の技術を使い、ローコストで経営を可視化できる仕組みを構築する」というのは当然のことです。なぜなら、ゼロから作るアプローチは、経営環境の変化の激しい今日ではあり得ないからです。コストもかかる。そうしたとき、有用なのがアプリケーションのコモディティ化です。例えばアウトソーシングサービスを活用し、初期費用と運用費を抑制して、そのアプリケーションの機能を利用する。そうすることで、経営状況がリアルタイムに把握でき、迅速な判断と次の経営戦略につなげられます。
また、海外子会社やグループ会社を含めて、シェアドサービスの形でアプリケーションを利用すれば、コストも抑制できるほか、グループ全体の状況を可視化してガバナンスを向上できます。特にオラクル製品の場合、シングルインスタンス、シングルデータモデルによるシングルビューを実現し、単一の視点から経営データを把握できるという特徴があります。会計も人事も生産管理も1つの視点から把握できるということです。