F5 Networksは、ウェブサイトのパフォーマンスと可用性を向上させるアプリケーショントラフィック管理システム「BIG-IP」、効果的なリモートアクセス環境を実現するSSL VPNアプライアンス製品「FirePasss」、WAN高速化アプライアンス製品「WANJet」により、アプリケーションデリバリネットワーキング(ADN)市場におけるさらなるシェア拡大を目指している。
ADNは、ネットワーク上でアプリケーションを効率的に配信し、活用するための仕組みを実現する同社のコンセプト。ビジネスにおいてインターネットの活用が不可欠となった現在、安全(Secure)、高速(Fast)かつ安定(Available)したアプリケーション配信のためのネットワークが企業から求められており、F5ではその実現に必要な製品やサービスを提供している。
F5の社長兼最高経営責任者(CEO)であるJohn McAdam氏は、「MicrosoftやOracle、SAPなどのアプリケーションをデリバリする場合には、セキュリティや可用性、パフォーマンスを向上させることはもちろん、サーバやストレージを最適化するための製品やサービスを提供することも重要になる」と話す。
同社はこれまでに、FirePassの開発企業であるuRoamを2003年7月に、イスラエルのファイアウォールベンダーであるMagniFire WebSystemsを2004年5月に、WAN最適化のSwan Labsを2005年9月にそれぞれ買収。ADNを確立するための製品のポートフォリオを拡大してきた。
さらに2007年8月、ストレージ最適化の実現に向け、ファイル仮想化ソリューションベンダーであるAcopia Networksの買収を発表。同年9月に買収を完了した。これによりF5は、ネットワーキングの仮想化からデータセンター間の仮想化まで、より広範なADN対応ソリューションを提供できる企業となっている。
Acopiaの買収が今後の成功の鍵に
Acopiaを買収するに至った理由をMcAdam氏は、「我々とAcopiaは、ビジネスで目指す方向性が同じだった。両社のソリューションを組み合わせることで、データセンター間におけるデータのやり取りを、より高速化することが可能。ADNをより一層強化することができる」と話す。
仮想化は現在、F5が注力している分野のひとつ。「特にAcopiaの特長であるストレージの仮想化は新しい分野であり、大きな可能性を秘めている分野だ」と、McAdam氏は言う。
「企業におけるストレージの稼働率は30%程度といわれている。Acopiaのストレージ仮想化テクノロジを活用することで、ストレージの利用効率を向上させることができる。また、高い投資利益率(ROI)も特長のひとつ。Acopia製品を導入した企業は、その投資を6カ月程度で回収できる」(McAdam氏)
2007年10月に開催されたセールスミーティングでも、Acopia製品を使ったファイル仮想化のデモが紹介され、各国の営業担当者から大きな反響があったという。「日本で開催したパートナーミーティングでも、WANJetを販売している日本のパートナーから“早くAcopia製品を取り扱いたい”という要望が出たほどだ」と、McAdam氏は話している。
今後の買収計画についてMcAdam氏は、「短期的には次の買収は考えてはいない。しかし、長期的に見れば、今後もさまざまな企業を買収する可能性は否定できない」と話している。