標準カーネル統合間近!TOMOYO Linuxの足跡:第1回--コミュニティの熱い力

富永恭子(ロビンソン)

2009-03-16 11:30

linux-nextへの統合

 「Jamesのツリーにはいりました」――

 2009年2月12日、TOMOYO Linuxのメーリングリストに送られたこの1行は、静かに、しかし瞬く間に日本のLinuxコミュニティの間に広まった。

 これは、国産セキュアOSであるTOMOYO Linuxが、セキュリティモジュールのメンテナ(管理者)であるJames Morris氏のリポジトリ(ソースコード管理データベース)に統合されたことを知らせるものだった。

 そして、このメールは、Linuxカーネル本体へのメインライン化へ向けて、TOMOYOがラストスパートをかけたことを意味していた。メインライン化とは、Linuxの標準となるカーネルのソースコード(メインライン)に統合され、その一部となることだ。

 2月13日、TOMOYO Linuxは、次期バージョンとなるlinux-nextのリポジトリにも統合された。今後、テストとバグの修正を終えた後、順調に進めばLinus Torvalds氏のリポジトリに統合されて、2009年7月にリリースされるバージョン2.6.30で、Linuxカーネルへの統合が実現される見込みだ。

NTTデータ 技術開発本部 原田季栄氏 NTTデータ 技術開発本部 原田季栄氏

 TOMOYO Linuxは、NTTデータが開発した「セキュリティ強化Linux」として、2005年11月11日にSourceforge.jpにオープンソースとして公開された。Linuxの標準カーネル(2.4/2.6)をベースにポリシーの自動学習機能を独自に備えた強制アクセス制御機構(Mandatory Access Control)を実装している。今回、メインライン化が実現すれば、Linuxセキュリティ強化の実装としてすでに統合されているSELinux、SMACKに続き、TOMOYO Linuxは3番目となる。

 しかし、TOMOYO Linuxは最初からメインライン化を目指していたわけではない。

 「その方針を転換するきっかけとなったのは、Linuxコミュニティの方々からの強力な後押しと支援があったおかげだった。コミュニティの存在なしに今回の成果を語ることはできない」と当時を振り返り、TOMOYO Linuxのプロジェクト・マネージャでNTTデータ 技術開発本部の原田季栄氏はいう。

すべてはCE Linux Forum「Japan Technical Jamboree」から始まった

 ことの発端は、2006年12月に行われたCE Linux Forum(Consumer Electronics Linux Forum)の技術検討会でTOMOYOが取りあげられ、原田氏が発表したことに始まる。ソニーやパナソニックが中心となって発足したCE Linux Forumは、オープンソーススタイルでLinuxやその周辺のOSSの組み込み機器用途での活用を目指すワールドワイドなフォーラムだ。企業や地域、業種の壁を越えたコミュニティ活動を促進している。

 ところが、「Japan Technical Jamboree」と呼ばれるその技術検討会でTOMOYO Linuxの紹介が終わったとたん、参加者から次々と寄せられたのは、質問ではなく「ぜひ、メインライン化に挑戦して欲しい」との要望だった。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  2. ビジネスアプリケーション

    新規アポ率が従来の20倍になった、中小企業のDX奮闘記--ツール活用と効率化がカギ

  3. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  4. セキュリティ

    「どこから手を付ければよいかわからない」が約半数--セキュリティ運用の自動化導入に向けた実践ガイド

  5. ビジネスアプリケーション

    改めて知っておきたい、生成AI活用が期待される業務と3つのリスク

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]