ターボリナックスと中国の普華基礎軟件股分有限公司(iSOFT INFRASTRUCTURE SOFTWARE、以下iSOFT)が提携し、共同出資による新会社「ターボラボ」を設立すると発表されたのは2009年8月だった。その後、中国では珍しくはないことのようだが手続き等に時間が掛かり、新会社は今年2010年に入ってから本格的に始動したという。
また、社名も当初発表とは異なり、「ターボシステムズ株式会社」となった。ターボシステムズは日本に拠点を置く日本企業として設立され、中国国内で開発センターを運営するという形になる。
今回、来日したiSOFT社長のChris Zhao氏に、ターボリナックスとの提携の狙いや、ターボシステムズが果たす役割について聞いた。
--ターボシステムズ設立の経緯について教えてください。
iSOFTは中国でOSの開発を行う企業です。中国のLinux開発企業であるCS2C(China Standard Software Co.,Ltd.)の株式も50%保有しており、Linux事業には積極的に取り組んでいます。
Linuxはオープンソースソフトウェア(OSS)なので、「中国だけ」「日本だけ」という形ではなく、みんな集まって一緒にやった方がよいはずです。今回の提携は、中国のソースと日本のソースを統合し、上手く活用することで日中両国の技術や人材を連携させ、発展に繋げていきたいという考えに基づいています。
また、iSOFTのビジョンは「アジア最大のOS開発企業になる」というものです。中国発の企業として、アジア全域に事業を拡げていくつもりです。アジアの中でも中国と日本は特に大きな市場ですから、まずは中国と日本の提携から着手したということになります。
--同様の取り組みとして、ミラクル・リナックス、Red Flag、Haansoftによる「Asianux」があると思います。ターボシステムズが目指すところと、Asianuxとの違いは何ですか?
私は以前Red Flagの社長をしていたので、Asianuxについてはよく知っています。当時はAsianuxの事業に精力的に取り組んだものです。Asianuxは「良きプラットフォーム」として、各国のソースを集約し、Linux事業として成功裏に展開することができたといってよいでしょう。ただし、既に私がAsianuxから離れて数年が経っているので、最新の状況について詳しく知っているわけではないのですが。
Asianux設立当時は、Linux開発企業は国ごとに分散しており、それぞれの国内においてもあまり大きな企業とはいえない規模のところが中心でした。市場シェアもさほど大きくなく、将来性についてもあまり楽観はできない状況でした。そうした各国のLinux開発企業が当時考えていたのは、各国のLinux開発企業が集結すれば市場の注目を集めることができるし、それぞれのソースを提供しあうことで技術的な発展も期待できる、ということでした。
さらに、オープンソースビジネスは国境による制約がないので、全世界での事業展開の可能性も考えていたのですが、その際に重要なのは、既存の巨大IT企業から認定(Certification)を受けることでした。個々の小さな単独企業のままでグローバルなITベンダーと交渉して認定取得を目指すよりも、Asianuxとして集まることで規模を拡大する方が交渉もしやすくなるという意図も本音としてはあったのです。
一方、今回iSOFTとターボリナックスが提携し、ターボシステムズを設立しました。実際のところ、Asianux設立の際の事情と似た部分もあるのは確かですが、違いもあります。私の立場からすると、最も大きな違いは、今回は資本提携という形で出資を行った点です。資本提携の結果、両社が共通の利害関係を持つことになり、より深い業務提携が可能になります。