個別システムもシステム基盤もOSSで--IPA第2回OSS導入実証報告(3)

萩原弘明 2007年05月17日 21時04分

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 去る4月25日に行われた、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)による「自治体におけるオープンソースソフトウェア(OSS)活用に向けての導入実証連絡会議」ではIPAの取組みについての講演に続き、午後からは実証実験に参加した各自治体からの報告が行われた。

 2006年度の実証実験に参加したのは山形県、栃木県二宮町、千葉県市川市、大分県の4団体である。今回は千葉県市川市、ならびに大分県の実験を報告する。

担当者絶賛の施設予約システム

 市川市では、「ICカードによる職員認証システム」というインフラに近いシステムと、比較的クリティカルではなく業務としても独立性の高い「施設利用予約システム」をセットにして開発した。

 2006年7月に総務省が発表した「電子自治体オンライン利用促進指針」によれば、21種類の自治体業務のうちでも施設予約はオンライン率が24%と際立って高い。むろん市川市もすでに多くの施設について、オンラインでの予約ができるようになっている。しかし、同市情報システム部参事の日下保裕氏は、「その複雑な利用形態からなかなかオンライン化できないものがあった」と話す。それは「男女共同参画センター」(以下、センター)での施設予約であったという。

 研修室(6室)、和室(2室)、研修ホール、調理工房を持つセンターは最低の利用時間が2時間で、それ以上であれば何時間でも利用できる。さらに「こどもルーム」も無料で利用できる。このため、さまざまな施設の利用希望者が一堂に会し、約半日をかけて抽選を行うという形式を取っていた。

 今回のシステムを実際に開発したのはNTTPCコミュニケーションズだが、この施設予約のロジックを開発できたことが成功の要因だという。実証実験が終わった現在、抽選は一瞬で終わるようになった。

 開発に際して心がけたのは、センターの利用者層への配慮である。高齢者が多く、自宅にPCもない、携帯も使えないという人が多いため、とにかく一目でわかるユーザーインタフェースにする必要があった。

 このためブラウザ上に該当する月のカレンダーと各日の予約状況を青い円で表示し、円をクリックすると(予約を申し込むと)赤に反転するようにした。実証実験には利用頻度の高い5団体50人の利用者(利用は登録制)も参加したが、研修を受けてすぐに皆が使えるようになったという。

 また自宅にPCのない利用者のために、センターのロビーにタッチパネル式のキオスク端末を設置した。この端末にはレシートプリンタが接続されており、予約した日付などがプリントアウトできるようになっている。NTT PCコミュニケーションズの吉田善幸氏によると、実はこのプリンタがOSS導入のネックのひとつだった。Linux対応のプリンタドライバが1機種向けしかなかったためだ。

 市川市側では、このセンターの職員約10人が認証システムの実験を兼ねて参加した。こちらの画面はシンプルで、市内の施設が一覧で表示され、職員は施設の追加から検索、予約状況の照合、抽選、廃止、削除まで行える。

 大きな権限を持つだけに、このシステムはICカードリーダにカードを挿しておかないと起動できない仕組みになっている。このICカードリーダにも課題が残った。他の施設予約システムにはWindows PCを使っている。現在は2台のPCを使い分けている状況というわけだ。こちらも、ICカードによる認証が必要で、挿したままにしておかないとログインできない。つまりセンターの予約システムを操作中に市民から他の施設の予約状況などを聞かれると、もう一台のPCにログインせねばならず、センターの予約システムは自動的にログアウトしてしまう。またOSS対応のカードリーダもハードウェアが限定されてしまうという問題があった。

 課題も残った市川市の実証実験だったが、日下氏の評価はきわめて高い。まず、このシステムの導入によりワークフローが変わったという。今までは1カ月前から利用料金を支払うことができたため、利用料金を払った払わないといった問題が発生しがちであったが、今回のシステムではすべてが当日払いとなり、この手のトラブルはなくなる。

 同氏は「私たち自身が一番喜んでいる。早く全ての予約システムをOSSにしたい」とまで語っている。男女共同参画センターの予約システムはこの5月から本格運用が開始される。

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