アプリケーションストアの正体
今存在するアプリケーションストアは、最近のベンダーから直接ダウンロードするモデルや、サードパーティー流通業者による流通モデルとはまったく異なるものだ。しかし、アプリケーションストアは、古典的なオープンソフトウェアプラットフォームとそのオープン流通モデルとはどう違うのだろうか。いくつか重要な属性がある。
- プラットフォームの所有者によって、流通と配信がコントロールされている。WindowsやLinux、あるいはBlackberryなどとは異なり、登録プロセスや審査プロセスを経た組織だけがアプリケーションストアでアプリケーションを配布することができる。これによって、顧客に対する説明責任とさらなる安全が確保される。審査プロセスには、簡単なものから徹底的な企業の素性調査まで、さまざまな形があり得る。ソフトウェアの配信は、顧客が使用しているそのプラットフォームに対するコントロールされたチャネル(繰り返すが、ウェブサイト、デバイス、その他さまざまなチャネルがあり得る)だけを通じて行われ、アプリケーションは妨害や改ざんが不可能な信頼できる情報源から、安全に配信されるようになっている。アップデートも同じ方法で提供され、よいアプリケーションストアでは、アップデートが新たに提供された場合、集中的な仕組みを使ってそれをユーザーに通知するようになっている。
- 自己完結したアプリケーションディレクトリとストア。アプリケーションストアがウェブサイトを別に持っていたり、その他の外部の仕組みを持っていたりしてもよいが、もっとも重要な特徴は、サイトやデバイスから直接アプリケーションストアが利用できるということだ。アプリケーションのダウンロードは、外部からの支援がほとんど(あるいはまったく)なくても、他のリソース(他のコンピュータなど)がなくても可能で、無線接続を持っていることが望ましい。よいアプリケーションストアは、新しいアプリケーションを見つけるための手間が小さく、アプリケーションへのアクセスと取り込みの手順をできる限り単純にしている。
- 集中型の支払い処理。アプリケーションストアには無料で配布されているアプリケーションも多くあるが、支払いが必要な場合には、プラットフォーム所有者が支払い処理の仕組みを提供する。すべてのアプリケーションストアが集中的な支払い処理の仕組みを提供しているわけではなく、課金が許されていないものさえあるが(例えばFacebookとそこで提供されるソーシャルアプリケーション)、顧客間(アプリケーションストアを通じてアクセスをしているユーザーと、アプリケーションを作成している開発者)の仲介者となることは、経済的な価値を得るための、最善でもっとも直接的な方法の1つだ。これは通常、支払いの一部として手続き費用を徴収するという形で行われる。近い将来には、広告や会費などを含む、プラットフォーム所有者による他の収益化モデルも出てくると予想される。プラットフォーム所有者とサードパーティーアプリケーション開発者の潜在的な経済的利益は、その多くがアプリケーションストアの収益化モデルがどれくらい効果的かに依存する。
- フィードバックと高品質を後押しするアプリケーションコミュニティ。完全にオープンなコンピューティングプラットフォームの荒々しい世界では、特定のアプリケーションが客観的な基準から見てどの程度良いものかを知るのは非常に難しい。アプリケーションストアでも、この問題を完全に解決できるわけではないが、アプリケーションストアは評価とレビューの仕組みを用意し、ユーザーがアプリケーションの全体的な品質と機能について知ることができるようにすることが可能だ(そして私の意見では、そうすべきだ)。この仕組みは、ベンダーに対しても潜在顧客に対しても、過去の顧客からのそのアプリケーションに対する情報を一貫性のある形で提供する。この公開されたフィードバックは、ベンダーに対しては改善の役に立つ、顧客からの明確な情報を提供し、顧客に対してはそのアプリケーションが本当に自分のニーズにあったものかを判断するのに必要な情報を与える。これは近い将来、eコマースの世界の評価とレビューの仕組みのように、購入者がアプリケーションストアに対して当たり前のものとして求める機能になると思われる。