2011年:「SIビジネス」の絶望と展望 - (page 2)

飯田哲夫(電通国際情報サービス)

2011-01-05 08:00

求められるITサービスは変わる

 こうした流れの中、大手企業はグローバル展開を見据えて海外製パッケージの導入を推し進め、従来型のカスタム開発へのニーズは減少すると予測される。そうすると、必ずしも日系SI企業を導入パートナーとする必要はなく、現地あるいはインドや中国などのITサービス企業とのビジネス拡大の流れができる。

 一方、国内においては、国内を主力市場とする中小企業が存在するが、IT投資を絞り込む以上、カスタム開発よりもパッケージ型あるいはクラウド型のサービスが求められることとなる。そうすると、所謂SIerが付加価値を提供できる場面は減少することとなる。

「グローバル」と「クラウド」だけで良いのか

 ところで、以前このコラムでも触れたように、中国のITサービス企業は日本市場にあまり魅力を感じていない。一方で、最近中国のITサービス企業の米国での上場が相次いでいる(「COMPUTERWORLD」)。つまり日本市場には魅力は感じていないが、米国市場には関心があるということである。

 現在、国内需要の衰退に伴い、日系の大手SI企業は海外オペレーションを拡大することに力を入れている。一方、そこには当然グローバルプレーヤーが以前から存在しているし、新規参入組として上記の中国のITサービス企業が低コストで勝負を掛けてくる。そこでは、仮に日系企業相手であっても同じ土俵で戦わなくてはならない。

 そう考えると、ITサービス企業として単に海外に進出することは、必ずしも解ではない。良くも悪くもグローバル市場での競争は、日系であることよりも純粋にグローバルプレーヤーを相手として、どのような付加価値を提供できるかを問われる。インドであれば、これまでに培ってきた業務ノウハウであろうし、中国は今や最も低コストでアウトソーシングを提供できる国になろうとしている。

 翻って国内ではクラウド化でコストを抑えたサービス提供に躍起になっているが、日系のITサービス企業にとって、国内市場こそはグローバルプレーヤーとの差別化を培うフィールドであることを忘れてはならない。つまり、単にコストを抑えることに邁進するのではなく、インベンションとインサイトを組み合わせたイノベーションを起こしていくことが求められている。

 グローバルもクラウドも否定はしないが、そこで何を展開するのかがあってこそのグローバルとクラウドである。2011年、日本のITサービス産業はSIに替わる付加価値を築く必要がある。残された時間的猶予は少ないだろう。

筆者紹介

飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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