富士通が20%超の電力削減を達成できた理由 - (page 2)

大河原克行

2011-09-08 07:00

 1つめは、サーバの移設と停止である。

 川崎、蒲田、幕張といった東電管内に設置していたサーバを、明石および富山へと移設あるいは停止するといった手を打ち、東電管内での電力使用量を低減。今後も当面は、この体制を維持することになる。

 「サーバ移設を決定した後に、関西電力管内における削減目標が政府から提示されたことで、明石へのサーバ移設決定を一時的には懸念したが、関西地域における節電の取り組みなどを踏まえた結果、『行ける』という判断がついた」(竹野氏)という。

 同社では、製造設備に関しても両管内以外への移転を図るといったことにも取り組んでいる。

 2つめは勤務体系の変更である。

 自社所有のオフィス系事業所については、土日にあわせて4連休を設定し、これを秋以降の祝日に振り替えて出社するほか、工場では一部工程において夜間シフトを実施。さらにテナント系のオフィス事業所では1週間の夏期休暇を個人ごとに分散取得。全社規模でのスーパークールビズの適用も行った。

 製造拠点では、稼働設備の集約や稼働時間の短縮、待機時の条件見直しなどを行い、これも節電につながっている。

 3つめは、空調や照明の節電、再生可能エネルギーの導入だ。

 スマートコンセントの採用により、接続した機器の消費電力を検出。省エネ施策の立案やワークスタイルの変革を促進したほか、再生可能エネルギーでは、2010年度にはグループ会社であるFDKトワイセルで120kWの太陽光発電設備を導入。さらに、2011年度には富士通テレコムネットワークスで200kWの太陽光発電設備を導入した。川崎工場や東京・蒲田のソリューションスクエアでは太陽光発電への取り組みを開始したという。

 なお、同社では再生可能エネルギーの利用率を、2012年度末までに2007年度比3倍としていた目標を、10倍にまで引き上げた。

スマートコンセントを導入、電力消費を可視化※クリックで拡大画像を表示
スマートコンセントを導入、電力消費を可視化※クリックで拡大画像を表示

 そして、節電に大きな効果を発揮したものとして、環境経営ダッシュボードの活用が見逃せない。

 これは、すべての拠点で環境に関するあらゆる情報を集約し、経営指標に加工して表示。すべての社員が閲覧できるようになっている。表示されるのは電力マネジメント情報、GHGの削減数値をはじめとする地球温暖化防止活動状況など。

 「経営層や管理担当者にとっては意思決定や判断をするためのツールとして、一般社員には節電に対する自主的な行動へとつなげることができた。とくに電力マネジメント情報については、午前9時の気温、当時の予想最高気温などのデータをもとに、事業所の消費電力量を予測。制限値を超過しないように事業所の電力使用をコントロールするといったことが可能になった。30分ごとに情報が更新されており、1時間単位で表示される電力使用量が、目標を上回らないで推移しているかどうかを確認できる。社員の意識を大きく変化させることができた」とした。

環境経営ダッシュボードを活用※クリックで拡大画像を表示
環境経営ダッシュボードを活用※クリックで拡大画像を表示

 なお、富士通では、沼津工場で最大6000kWを発電できる自家発電装置を有しており、東京電力の要請により、午前8時〜午後8時までの12時間体制で定常的に自家発電装置を稼働。5000kWを発電し、東京電力への供給とともに、沼津工場をはじめとする4つの同社拠点で自家発電した電力を使用したという。

自家発電装置を稼働させたことによる環境への影響※クリックで拡大画像を表示
自家発電装置を稼働させたことによる環境への影響※クリックで拡大画像を表示

 「自家発電によるGHGの排出量増加分は数百トンであり、全体の目標に与える影響は軽微」だとしている。

富士通が取り組んだ節電対策※クリックで拡大画像を表示
富士通が取り組んだ節電対策※クリックで拡大画像を表示

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