海外進出企業のIT環境、集約から分散、そして集約へ--IDC調査

富永恭子 (ロビンソン)

2011-09-29 06:00

 IDC Japanは9月28日、国内企業の海外進出に関するIT課題の調査結果を発表した。海外における売上高や生産高比率が上がるにしたがって、IT面での課題も変化しているという。海外進出やグローバル化の段階によって、国内本社を中心とした「集約型IT」から、各国拠点が独自にITを持つ「分散型IT」を経て、グローバルにアプリケーションやITインフラを共有する「集約型IT」に向かうという3つの段階をたどって進化しているとしている。

 IDCでは今回、海外進出を行っている、または予定している国内企業を対象に、「グローバルIT課題に関するCIO調査」を実施した。調査結果によると、国内企業の海外進出は進んでおり、企業が海外での販売、生産、研究開発機能を拡大していくにしたがって、ITに関する課題も徐々に変化しているという。たとえば人材面では、海外進出(販売、生産)の初期段階では進出先拠点で「IT実務スタッフ確保」を課題として挙げた企業が多かったのが、進出が進むと「ITマネージャー確保」と答える企業の割合が上がってくる。さらに海外売上高比率が50%を上回るような企業では、「拠点ごとの協業体制強化」を挙げる企業も増えてくるという。

 同様に、ITの持ち方や在り方も変化してきている。海外進出の初期段階では、国内のITシステムに「間借り」するような形で運用されていた海外拠点のシステムは、段階が進むにつれ、拠点ごとに独自にシステム開発や運用する割合が増えるという。ところが、さらに段階が進んで海外売上高比率が60%を超えるようになると、分散していたシステムをもう一度グローバル規模で集約しようという動きが強まる。IDCでは、企業のグローバルなITは「集約→分散→集約」という段階をたどることになると分析している。ただし、この段階は全てのITが一斉に動くわけではなく、インフラかアプリケーションか、アプリケーションの中でもバックオフィス系かフロントオフィス系かで変化のスピードは違うとしている。

 また、国内企業の海外進出が加速する中で、そこにビジネスチャンスを見出すITベンダーも増えているという。IDCでは、その際、海外市場におけるIT提供能力を整備するとともに、海外でのITの段階を踏まえた提案が欠かせないと指摘している。

 IDC JapanでITサービス リサーチマネージャーを務める伊藤未明氏は、「国内ITベンダーは、海外進出を行っている企業が、現在、集約→分散→集約というIT進化のどの段階に置かれているのかを把握するとともに、将来的にはどの段階に向かっていくのかを踏まえた提案を行うべき」とコメントしている。

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