海外コメンタリー

クラウドの台頭が導くコンシューマライゼーションの終焉

Robin Harris (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2015-07-22 06:15

 クラウドコンピューティングの台頭は、情報技術の世界をさまざまな形で変化させつつある。中でも特に大きな影響は、ITのコンシューマライゼーション(消費者向け製品が企業にも浸透する現象)を終わらせつつあるということだ。今後10年間で、消費者とITプロフェッショナルが使う製品の差はますます広がっていくだろう。

一般消費者向け製品を「使える」ように

 ITのコンシューマライゼーションが進んだのは、経済的な理由によるものだ。ITプロフェッショナルはSCSI、ミニコン、SATAのSNA、x86、イーサネットにこだわり続けたが、古いデバイスを使い続けるコストは高すぎた。このため、プロフェッショナルは覚悟をして新しいものをなんとか使えるようにした。

 ITのコンシューマライゼーションは、80年代と90年代の消費者向けパーソナルコンピュータ(PC)革命で生まれた大量消費を反映したものだ。PC以前のコンピュータは、高価でメーカーの独自性の強いものだったが、コンシューマライゼーションによって、コンピュータは安価でオープンなものになった。

 Alan Turing氏が、有名な論文で示したように、あらゆるチューリングマシンは、他のチューリングマシンをシミュレートすることができる。Intelが競争に参加して、性能を向上させ、コストを下げ始めると、ミニコンは死に追いやられた。なぜなら、生産数の少ない専用システムでは、その進化のペースについて行けなかったからだ。

 IT業界は10年の間に、1つの会社がハードウェア、OS、アプリケーション、ネットワークなどをすべて設計していた垂直統合の世界から、ハードウェアはIntelが、OSはMicrosoftが、アプリケーションはあらゆる会社が、ネットワークはCiscoが作る世界へと変わった。

 ITプロフェッショナルは機能を失ったことに文句を言ったが、ベンダーは努力を続け、消費者向けのデバイスを、垂直統合ベンダーが提供していたものに匹敵する水準にまで引き上げ、しかもはるかに安い値段で提供するようになった。

「パーソナル」と「コンピュータ」

 現在では、多くの人はデスクトップPCを必要としていない。消費者はノートPC、タブレット、スマートフォンを選んだ。それらのデバイスで必要とされる、バッテリー持続時間、軽量化、接続性などに関する技術は、データセンターで必要とされる技術とはあまり関係がない。最高経営責任者(CEO)が自分の「iPhone」を仕事に使いたがったため、BYODは当たり前になった。最高情報責任者(CIO)には選択肢はなかった。

 現在では、クラウドプロバイダーがIT革命を推し進めている。Googleが非効率な電源が百万ドル単位のコスト増の原因になっていることに気づくと、Googleの納入業者はその問題を素早く解決した。そして、その種の問題にまったく注意を払っていなかった人や、Googleのような影響力を持っていなかった企業も、その恩恵を受けた。

 ウェブスケールのその他の技術も、企業に導入されつつある。GoogleやAmazonが先陣を切って推し進めたコンピューティングやストレージアーキテクチャの大規模なコモディティ化も、今ではNutanixScalityのような企業や、「OpenStack」のようなオープンソースソフトウェアによって提供されている。

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