最適な顧客体験を実現するためのオムニチャネル - (page 2)

清水博(マンハッタン・アソシエイツ)

2015-10-01 07:00

オーダー処理およびフルフィルメント管理

 顧客満足度を上げるためには、販売チャネルを統合し、買い物をよりシンプルにする必要がある。では、実際どのように販売チャネルを融合し、シームレスなサービス提供すれば良いのだろうか。

 オンライン販売では、在庫レベルの把握は絶対条件である。買い物客が支払いをしようとしている時に、在庫が不足しているために買い物かごから商品が消えたらビジネスにならない。単純な棚卸数量に限らず、企業全体で存在している在庫を把握し、その情報をオンライン販売に活用する。そのためには在庫ビューを統合する必要がある。

 つまり、輸送中や受注済み商品を含む店舗ネットワーク全体リアルタイム在庫を把握し、すべてのチャネルからの注文を一元管理することで、ネットワーク在庫をリアルタイムに引き当てることが可能となる。その結果、よりシンプルなオーダーフルフィルメントが可能になり、店舗在庫はネットからも注文でき、消費者に対しシームレスなサービスを提供できるだけでなく、販売機会損失を低減することができるのである。


 例えば、複数の倉庫を持ち、オンライン販売も行っているような小売企業であれば、倉庫と店舗ネットワーク上の在庫を一元化することで、サプライヤーへの過剰注文を回避しつつ、欠品による販売機会損失を防ぐことができる。また、在庫ビューを統合することで来店客に対しては幅広い品揃えを提供し、オンライン注文に対しては、輸送コストなどの要素も取り入れた効率の良いオペレーションを実現することができるのである。

 また、小売企業にとって、在庫ビューの統合はさらに多くの施策を打つためのプラットフォームにもなる。例えば、特売の機会を把握し、値下げではなく、小売希望価格に近い売値を維持して送料無料の特典を提供するなど、特定の店舗での施策ではなく、全体在庫を活用しての施策を打つことで、企業は利益率を高め、顧客はより安価に商品を手に入れることが可能となる。

 しかしながら、これらの変化においては、意識改革も必要とされ、小売企業はバックヤードも店頭と同じく重要で、顧客ロイヤリティを高める場所という認識を持つ必要がある。ブランドや店舗レイアウトももちろん重要ではあるが、売る商品がなければ売り上げにはならない。これはどの販売チャネルにも言えることで、店舗に限った話ではなく、これを達成するためには、すべての販売チャネルの在庫を同期化し、一元化した統合ビューを持つことが必要である。

 今後は販売チャネルを統合し、利益を確保しつつチャネルごとのフルフィルメントを適切に実行できる企業が競合優位性を獲得できると考えられる。それにより、難しい顧客体験を実り多い機会に変え、最終的に顧客ロイヤリティを高めることにつながるのである。

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