大木豊成「Apple法人ユースの取説」

管理部門がなくなる時代--そして情報システム部門がなくなる時代 - (page 2)

大木豊成

2016-02-16 07:00

情報システム部門の責任者は一度Macを触ってみよう

 マルチOSを毛嫌いする人には、Windows以外を触ったことがない人が多い。情報システム部門の責任者で、もしWindowsしか使ったことがない責任者がいたら、一度Macを開きその設計思想に触れてみることをお勧めする。


 Windowsのタスクバーは画面下にあるが、Macは上にある。これは、人の視点は左上から右下に流れることを理解した人たちが設計しているからだ。ほとんどのアプリケーションのタスクバーが上に存在するのも、同じ理由からだ。横書きの本を読んでも、当然左上から書かれていて、下に読むようになっている。下から上に読む本など存在しないはずだ。WindowsからMacに切り替えた人がタスクバーを使いづらいと思うのは、単なる慣れに過ぎないことが使い込むに従って理解できるはずだ。そういう設計思想を学ぶことが、これからの情報システム部門に求められていくように考えている。

情シスにはプログラマーよりデザイナーが必要な時代

 IT企業以外の情報システム部門に、どれくらいのプログラマーが存在するのかというデータは持ち合わせていないが、企業によっては社内システムの構築や改修を社員プログラマーが行っているところがある。もちろんこれは、リソース活用であり、必要な仕事をしているのだろう。

 しかし、実はどこかのクラウドサービスで賄えるものかもしれない。あるいは、少し視点を変えることで、その改修は必要ないかもしれない。つまり、全体を俯瞰し、どこにどういう機能が必要なのかを考え、ゼロベースで設計する力が必要になってくるのだ。だから、今情報システム部門に必要なのは、プログラマーではなくてデザイナーではないだろうか。デザイナーというのはファッションデザイナーのことではなく、英語のDesigner、設計者のことを指している。設計者がいることで、時間も労力も、そしてコストも大幅に改善されることは往々にしてあるのだ。

経営に参画する情報システム部門

 筆者の顧客企業の中には、情報システム部門の機能を経営企画室の中に持つ企業が何社かある。これらの企業は、ITは戦略的ツールだと考えているのだ。現代において企業を経営する上で、ITは絶対欠かせないツールになっている。しかし、ツールありきの考え方ではいけない。自社のビジネスモデルや収益源を理解した上で役立つツールを導入し、あるいは構築していくことが重要なのだ。そのためには、経営企画室内に情報システム部門の機能があるのは、極めて正しい姿だと言えるのではないだろうか。

 筆者は過去に、社内で肩身の狭い思いをしている情報システム部門の人たちを何人も見てきた。古いシステムのお守りをするだけで、新たな予算ももらえず、トラブルがあったときには文句を言われる割の悪い立場だからだ。これでは、ITはコストのかかるものであり、役立つツールにはなっていきづらい。役立つツールにしていくためにも、情報システム部門を会社の中心に置いていくことが、これからの情報システム部門、そして企業経営のあり方ではないだろうか。

経営者にはiPadかiPhoneだけ持たせて出かけさせてみる

 今回は、経営管理部門と情報システム部門の変化の必要性について述べた。最後に、それらの部門を統率する立場である経営者が、テクノロジの進化をどのように取り入れていくべきなのか、考えてみよう。

 年代問わず経営者の中には、現在もフィーチャーフォンを持ち歩いて、PCすらもロクに触らない人たちがいる。そういう人たちにはiPadを持たせてみてはどうだろう。iPadから、会社メールが見られて、社内情報にアクセスできるように設定しておく。外出先から社内の状況が手に取るように分かり、どこにいても経営の本質に携わり得ることを実感してもらえるのではないだろうか。

 あるいはiPhoneで、外出先から社員の報告を逐一確認できることを体感してもらい、管理職や一般社員にもこういう情報が共有できる大切さを理解してもらえる機会になるのではないだろうか。筆者は、経営者こそ、もっとITに親しむべきだと考えているし、実際に顧客にもそのように提案している。経営者が「ITには疎い」などということを恥ずかしいと思うくらいの時代。テレワークを含め、ITで自社をより強くしていく、より良くしていく時代だという認識が必要なのだ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

マイナンバーカードの利用状況を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]