IoTセキュリティの設計図

IoTの収益化--知的財産の保護とマネタイズのためのエンタイトルメント管理 - (page 3)

前田利幸

2016-08-09 07:00

収益化(マネタイゼーション)

 最終的に、エンタイトルメント管理によってIoTの管理機能を飛躍的に高めることが可能になる。もはや、製品は販売時に一度だけ収益を生み出す存在ではない。ソフトウェアを機能レベルで保護し柔軟にコントロールするとともに、収集したデータから利用状況に関する有用な知見を手にすることで、例えば個々のセグメントや市場に合わせた製品の最適なパッケージと価格設定といった、ビジネス上の重大な判断をより容易に下すことが可能になる。

 IoT開発者は、ユーザーが個々の機能をオンデマンドに有効化できるようにすることで、例えば顧客パターンや消費者のトレンド、特定のボタンの利用状況といったユーザーの行動について膨大な量のデータを手にできる。このようなリアルタイムのデータおよびアナリティクス、ならびに関連する予測サービスを企業が有効利用により価値が生み出され、既存の顧客と見込み客の両方に質の高い価値を提案することが可能になる。

 エンドユーザーがより状況に適した質の高い対応と利便性を期待する中で、ベンダーがデータの力を活かして顧客のニーズを的確に満たす能力は、自社製品の差別化を図るとともに製品販売後にもさらなる収益源を確立する上で、重要な役割を果たす。

 ベンダーは、利用状況をモニタリングして分析することによって、質の高いカスタマーエクスペリエンスを提供し、今後の機能強化と開発のプランを立て、利用状況に基づいたメンテナンスおよび保証サービスを提供できる。

 また現在のニーズをリアルタイムに管理できるだけでなく、将来のニーズを予測することで、メンテナンスコストを削減し、サービスの中断をなくすことが可能になる。ライセンス管理製品は、例えばアプリケーションへのアクセスが認められているユーザーとそのタイミングのチェックやソフトウェアのリモートアップデートの実行など、クラウド環境における重要なセキュリティ機能のプラットフォームとしての役割も果たすことができる。

 エンタイトルメント管理は展開しているアプリケーションの数やタイプに依存しないので、例えばデバイスの数が少ない新興企業でも、または数百万のコネクテッドオブジェクトを有する大規模IoT環境でも利用できる。

 これらの製品はERPやCRM、請求管理、マーケティングオートメーションシステム、またサードパーティのライセンシングソリューションとも簡単に統合して利用できるので、OEMは1つのツールでOSライセンスを管理することが可能だ。これらのすべてによって大幅な運用コストの削減と製品の市場投入までの期間の短縮を実現しながら、比較的シンプルな環境でIoTの幅広いシナリオに向けてカスタマイズした創造的なサービスを提供することが可能になる。

 IoTプロバイダが将来に目を向けていく中で、ソフトウェアベンダーは適切なパッケージングとライセンシングによって、すでにユーザーが利用している既存のハードウェアまでも含めて、新しいエクスペリエンスを提供することが可能になる。

 エンドユーザーは、いつでもどこでも必要な機能をアップグレードしたり、不要な機能を無効化したりできる。メーカーは、製造現場では汎用的な製品を製造し、市場に出す際には異なる顧客層と価格ポイントに合わせた機能で、世界各地に出荷することができる。

 これによってサプライチェーンの物流プロセスを合理化しながら、あらゆる市場に対応する柔軟な価格設定モデルを背景に、質の高いパーソナライズしたソリューションをより幅広い顧客層へ提供することが可能になるだろう。

前田利幸(まえだ としゆき)ジェムアルト株式会社
ソフトウェアマネタイゼ―ション事業部 シニアプリセールスコンサルタント
ソフトウェアセキュリティ・収益化ソリューションの提案活動と技術コンサルティングコンサルタント。 SIer、フリーランスのエンジニアを経て、セキュリティベンダーで著作権管理ソリューションのプロジェクトマネージャー 、IoT関連企業でシニアコンサルタントを担当した後、ジェムアルト株式会社(旧 日本セーフネット)に入社した。

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