2019年5月1日付けで日本IBMの代表取締役 社長執行役員に就任した山口明夫氏が6月5日、同社のビジョンを発表した。重点分野は「顧客のデジタル変革をリード」「社員が輝く環境の実現」「社会貢献の推進」の3つだという。
日本IBMの山口氏。先進的なテクノロジーの例として、極小のCPUを紹介している
まず山口氏は「業界ごとのプラットフォームの構築」を進めていくと述べた。日本IBMは、動物病院に向けてペットの健康状態や受診予約を製薬会社や飼い主と共有できるプラットフォーム「VRAINERS」を共立製薬と開発。加えて、ブロックチェーンを活用した国際貿易のプラットフォーム「TradeLens」を海運企業のMaerskと展開。書類に関するトラブルを減らし、輸送時間を短縮できるとしている。
続いて「責任あるテクノロジーの活用」について言及した。同社は2017年に「信頼性と透明性に関する基本理念」を策定。これをもとに人工知能(AI)の研究開発を行っているという。山口氏は「われわれは現在『AIが正常に稼働していることを確認するAI』を研究するなど、信頼性と透明性の担保にものすごく投資している」と語った。
そして「共同研究の推進」を行っていくとコメント。「一社で何かを成し遂げられる時代ではない。次の時代をつくるには、もっと連携する必要がある」と話した。IBMは2019年5月、マサチューセッツ工科大学(MIT)と「MIT-IBM Watson AIラボ」を設立。今後AIが汎用化されたら、どういったテクノロジーが必要とされるのかを研究しているという。
「顧客企業との裁判などがあったが、今後自社の信用をどう回復させるつもりなのか」という質問について山口氏は「顧客企業や社員、社会と向き合い、しっかりとコミュニケーションを取ることで信頼回復に努めたい。近年のマイナスな出来事に関しては、やっていることは間違っていなかったものの、顧客企業とのコミュニケーションをもう少し丁寧に行う必要があったと考えている」と述べた。
最後に山口氏は「これまで直接利益につながることを優先しがちだったが、今後は『他者への貢献』を大切にしていきたい。社員は毎年、年始に四半期ごとのビジネス目標を立てているのだが、就任に当たり『数字に表れないことでどんな活動をしたか』という項目を加えた。日本IBMには、自分の事業部の成績が上がりさえすればいいと考えるのではなく、他の社員や顧客企業の役に立ちたいと思っている社員がたくさんいる。今までそういった思いがあまり反映されていなかったのは、見えない壁があったからなのかもしれない。新体制になり、1カ月ほどしか経っていないが、多くのフィードバックを受けて手応えを感じている」とコメントした。